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第120話 佳純の歌
「こんばんは、蓮華坐です。
僕たちは高校生バンドですがもうすぐ卒業です。
ボーカルの佳純だけ二年生です。
懐かしいロックらしいロックをやりたいと頑張って来ました。
今日はオリジナルをやります。作詞佳純。曲は俺、ユキです。聴いてください。」
場内は大盛り上がりだ。やっぱり地元だ。知り合いがたくさん来ている。
佳純の少し掠れた声が歌い出す。
イントロなしにいきなり歌が始まった。
バラードだ。
ー朝、目覚めて手を伸ばす。
ーアンタがいない
ーさびしい俺を置き去りにして
ーいつからだろう
ーアンタの温もりに慣れてしまった
ー男らしさって何だ?
ー俺はアンタが欲しい。
ーしゃれた言葉はいらない
ーストレートに愛して
そこから激しいドラムと共に佳純のシャウトがはじける。さっきまでの切ない声が、思いの丈を込めた叫びになる。
ー帰って来い!
ー帰って来いよ!
ーもう一度抱きしめて!
佳純の綺麗な顔が泣きそうになる。
白っぽく染めた髪を振り乱して、もう帰らない恋人を思う気持ちが溢れる。
(マジ、佳純は自分の事を歌ってるの?)
佳央には痛いほど伝わる。この所、キシと逢えない日が続いてると言ってた佳純。
「なんか悲しい歌だね。
ハードなロックでも、救いようが無いような。」
谷田玲子たちが言っている。
他の曲も佳純の今を歌っているようでツラい。
ー夢の中で抱きしめたのに
ー目覚めたらどこにもいない
ー壊れてしまったの?
切ない恋の終わりの歌。
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