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第125話 ボスの言い訳

 キシは親父に,事務所の奥の広間に呼ばれた。 「キシよぉ、ここに呼んだのは何でか、わかってるんだろ?」 「はい、飛鳥さんの事でしょうか?」 「おまえはあのストリッパーと出来てるのか?」 「いや、出来てるというか、一回だけの約束で,抱いたんですが。旦那公認ですよ。」  親分である佳純の父親は、キシとの付き合いを不本意ながら渋々許したのだった。大のホモ嫌いな親父。  それが佳純を裏切って人妻と不倫、とは許しがたい。 「男と女は、付いたり、離れたり、そんな事は百も承知だ。だがな、俺の息子をホモにしやがって、女と不倫だと⁈」  怒りはもっともだ。 キシはなぜ親分にバレたのか?と聞いた。なんとあの飛鳥が訪ねて来たと言う。 「もう一度、キシさんに抱かれたいんです。 忘れられないの。」  その豊満な肢体が透けて見えるような色っぽい服装で、組の事務所にタクシーを乗り付けて来た。組の若いもんは色めき立った。 「いい女だなぁ。ヤバいよ。」  後から数人の男たちが迎えに来て連れて帰ったが。  数日後、旦那の山崎さんが詫びを入れに来た。 札束を積み上げて 「ご迷惑をお掛けしました。これは迷惑料です。 どうか、お納めください。」  目の前に一千万の札を積み上げて 「これでお許し頂けないなら、私の指を詰めます。」 「山崎さん、映画の見過ぎだよ。 ま、金はもらっておく。それと、二度とキシに近付かない、と血判をもらおうか。」  若いもんに言いつけた。墨と硯を持って来て、 毛筆で巻き紙に墨痕黒々と達筆で誓約書をしたためた。  黒川がドスを差し出して山崎は指に傷をつけ、血判を押した。 「女房の始末を、きちんと付けろや。 いい女だな。大事にしてやれ。」 「自分、惚れ抜いているもんで。 恥ずかしながら、ここへ参った次第です。 どうか、嫁の不始末、かんべしてください。」 「聞くところによると、何か病気なんだそうだな。」 「はい、人様に迷惑な病気でして。」  それでも、「天使のようだ」とファンが大勢いるのだ。  山崎が帰ってから、キシを呼んだ。 「おまえ、浮気して、佳純とも付き合ってるのか?」 「いえ、あれ以来、若とは二人だけでは会っていません。若が俺の所に来てくれません。  俺、俺、若を愛しているんです。」 「極道が、泣き入れてるんじゃねえよ。」

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