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第129話 エンジニア辰夫

「さすが工業だな。AIとか詳しいんだ?」  みんなが辰夫の博識に驚いている。 「生成AIは、テキストで学習するけど、 フィジカルAIは体験で学習するんだよ。  思考の立体化っていうか。」 「すげぇ、辰夫。底辺工業でも、勉強したんだな。俺、今辰夫を尊敬した。」  佳純と佳央も辰夫を見直した。乱暴な脳筋野郎では無かった。 「俺、プログラミングとかやりたかったんだ。」 「人殴るより,全然いいんじゃね?」  キシは高校生の会話を楽しそうに聞いていた。 久しぶりに見る佳純は、生き生きとして魅力的だ。  今すぐ抱きしめたい。その気持ちが伝わったのか、目が合ってしまった。  横で見ていた佳央がいち早く気付いた。 「ミケにもっと頼もうぜ。」  注文はテーブルのタブレット端末でするのだが,ミケに話しかけてしまう。 「シンギュラリティでミケに負ける日が来るのか?辰夫、どう思う?」 「飼い慣らす事だよ。懐くまで可愛がる。」  横でヤマが 「恋人と同じかな?」 「ああ、人臭いミケに愛を感じるなぁ。 ポテトフライ持って来てくれたしね。」 「注文したからだろ。俺、チーズハンバーグにご飯付けて。味噌汁も。」 「あ、俺も。」  みんな、ほぼハンバーグを食べることになった。 「佳央の母ちゃんのハンバーグ,美味いんだよな。」  キシは微笑んで幸せな会話を聞いていた。 「キシさん車で来てる?」  佳央が聞いた。 「俺の車は事務所に置いてあるけど。 ここにはヤマの車で来たよ。」 「じゃあ、佳純を送ってやって。」  帰るところは事務所と同じだ。佳純の住む母屋は事務所の隣だった。 「全員乗れるよ。みんな送って行ってやろう。 8人乗りだ。ステップワゴンだから。」 「この前は、レクサスに乗ってたよね。」 「ああ、あれはナンパ用。レクサスだと女がよく釣れる。」  ヤマの運転でみんなを送って事務所に帰って来た。辰夫も部屋住みで,一部屋もらっている。 「ここから、俺と佳純は、マンションまで歩いて帰るよ。佳純、泊まっていくだろ?」  さりげなくキシが言った。 頷いてキシと並んで歩いた。キシが手を取って握りしめた。佳純は震えた。

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