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第131話 違うんだ
そんな事するつもりなかったのに。突き飛ばすなんて。
(俺はガキだ。いちいち気にするつもりじゃなかったのに。青臭い事を言ってる俺。)
もう一度愛されたい、とキシを見た。
キシは紳士だ。嫌がる事はしないだろう。もう一度抱きしめて欲しいのに。
「キシ、ごめんなさい。」
「ああ、俺が悪いのに。
親にだって滅多に謝らないだろ。
なぜ、ごめんなさいなんだ?」
首に抱きついて
「拒否してしまった。こんなに好きなのに。
嬉しいのに、セックスが怖いよ。」
(まるで世間知らずなガキ丸出しだ。)
「俺が悪かった。佳純は全部知ってるんだね。
キチンと伝わっていればいいけど。」
フェスが終わって、キシと花園飛鳥との情事は
みんなが知る所となった。
タバコに火をつけながらキシは語った。
「佳純は理解できるか?
彼女は病気なんだ。ニンフォマニア。
色情狂なんだって、旦那の山口さんが言うんだ。
医師に診断されているって。
そして彼女が俺を気に入ったから抱いてやってくれ、と旦那に頼まれた。
キッパリ断ればよかったんだけど、彼女の美しさに負けてしまった。」
「俺の事、思い出さなかったの?」
キシは佳純を抱きしめた。
「佳純を傷つけてしまった。そして嫌な気持ちになったんだ。楽しくは、なかったよ。
何を言っても言い訳にしかならない。
もしも、佳純が許してくれるなら、佳純を抱きたい。そして絶対離さないよ。」
佳純は複雑な気持ちになった。
(こんな時は、自分の気持ちに正直になろう。
許す、とか許さない、とかじゃなくて、今誰が欲しいか、なんだ。)
抱きついて
「俺、キシが欲しい。
ツラい事,考えるのやめるよ。」
キシの抱きしめる手に力が入った。
「これからもキシに抱かれると心がチクッとするかもしれないけど。」
「そばにいてくれるなら、ずっと俺を責めてくれ。肝に銘じるから。
おまえを失ったら、生きていく気力が無くなった。」
「まだ、失ってないよ。」
しっかりと目を合わせて見つめ合った。
佳純はなんだか素直になれないけど、初めてキシに抱かれた時を思い出していた。
男同士だということを改めて考えさせられた。
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