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第145話 葬式
佳純は,今回のイジメ事件がガキのケンカだけではないことにウスウス感づいていた。
少しだけテレビのニュースでも取り上げられたのは、今関が猟奇的な動画を撮っていた事だった。その動画をヤクザのM会の資金源に提供していたことは、ニュースには出なかった。ヤクザは周到にマスコミにも手を回しもみ消す。
もちろん上田組も、親分が箝口令を敷いた。いつもの事だった。警察発表の通り、と言うわけだ。無闇に一般人の感情を揺さぶるのは、はばかられた。
あまりにもエグい犯罪なのだ。C国との国交も危ぶまれる。ガキのケンカで留めておくように、話が出来ていた。
佳純は授業が終わって部活に顔を出した。ずっと落ち着かない毎日で、身体が動きたがっていた。
「練習マッチやろうぜ。」
一年生もいた
何とかチームが出来た。誠が走れるようになった。と言ってもまだ試合は無理だ。杉山監督と見ているだけにする。
田舎の学校は校庭が広い。プロ並みの広さで、誠のお父さんがグランド整備に金を出してくれたのでいいピッチが出来ている。
走った。久しぶりに走り回った。
「上がり過ぎたよ。ディフェンダーがシュートするんじゃねえよ。」
秋川と花田が怒っている。逆にすごい早さで上がってくる。佳央と佐藤が必死に戻る。
山南と斉田が早い戻りでカバーする。そこでホイッスル。試合終了。
終わって、佳純が水道で頭から水を被っている。上半身裸だ。
「寒くねえの?」
「バカは風邪ひかないってか?」
ひどい言われようだ。
みんなで休んでいると秋川が不意に
「馨、おふくろさんが亡くなったって?」
「えーっ?大丈夫なのか、休まなくて?」
暗い顔をして花田が答えた。
「俺の家、複雑なんだ。
俺は母ちゃんの弟に育てられて、母ちゃんと呼んでるのは叔母さんに当たる人。
死んだのは顔も見たことのない女だ。
それでも俺が喪主だってさ。」
「ご、ごめん。嫌な事、聞いちゃった?」
その場が気まずい雰囲気になった。葬式とかは出さないらしい。荼毘にふすだけだそうだ。
佳純はお悔やみをどうするか、秋川に聞いてみた。
「サッカー部でまとめて何かしないと、な。」
「何もするなよ。」
冷たく言う秋川の顔を見た。
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