155 / 178

第155話 一人の部屋

 キシは思い出す。 遊び疲れてたどり着く一人の部屋。気のあった連中と遊んでいても最後は必ず一人になりたかった。 「キシは一人が好きなの?」 「ああ、憧れは熱い国。ジャマイカだ。」 緩い生き方。10代の頃、ジャマイカに行った。  貧しい国。政情不安な国。 でも、行ってみれば人々は優しかった。  犬も優しく揺れてるような、みんな笑顔で優しい。クラブで知り合ったラスタマンについて行ったら、彼らのコミュニティだった。   パイプを回し呑みしてガンジャを知った。  町に音楽が溢れてたよ。でかいスピーカーを担いだ奴がいる。すぐに集まって踊り出す。  ラスタファーライ!女の子たちも緩い感じで 恋が始まる。優しいんだ。」 「女の子とセックスした?」 「いや、俺はボブマーリーみたいな男とやったよ。東京から一緒だったから。」 「その人と二人でジャマイカに行ったの? いいなぁ。」 「日本に帰って来たらそいつパクられて、結局別れてしまったよ。ジャンキーだったんだ。」  佳純はショックだった。もちろんキシに恋人がいたって当たり前なのに、子供じみた悲しい気持ちになった。 「一人暮らしのキシの所に行きたかったな。」 「今、来てるじゃないか。」 「その頃だよ。キシはいくつ?」 「19才だったかな。」 「その頃出会いたかった。」  キシが笑ってキスしてくれた。 「ははは、佳純は小学生か? 可愛かっただろうな。」 「うん、こんなに大きくなって可愛くないね。」 「俺よりは小さいだろ?」 「うん、181cm。」 「1センチが微妙だな。」 「キシは?」 「188cmあるよ。」 「素敵だ。」 「ベッドが狭いな。」 「いいの、くっついてるから。」  キシも佳純も不安要素は先送りしようと思った。 「明日は気をつけよう。 一人で外、歩くなよ。」  それでも銃を向けられたら、逃れようが無い。

ともだちにシェアしよう!