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第163話 人間競市にんげんせりいち
「もう、お客様にご案内を出してしまったのよ。
コンテナはまだ?」
「織子(オリコ)様。もう少しお待ちください。
山岡が運んでくるんで。
少し手間取ってるようです。」
「運ぶって?車?何人いるの?」
「へえ、ガキを含めて5人ほどです。」
「ガキ?」
「ええ、2才の子がいるようです。」
「そうね。みんな子供が好きだわ。」
(好きって、いたぶるのが、だよな。
エグい姐さんだぜ。)
「もう、ショーの案内は出してるんですか?
準備が整ってからだと思ってました。
急がないと。」
ヤマたちはステージの周りの掃除と、何か消毒液などの薬品の準備をさせられた。
古参のスタッフらしい男が、掃除をしながら無駄口を叩く。
「あんたら、いい男っぷりだな。
水商売で稼げるんじゃねえの?
こんな胸糞な仕事しなくても。」
「胸糞な仕事なんですか?」
「知らないウチがハナだな。
せいぜい逃げ出さねえように、な。」
もう一人のスタッフが
「政財界の大物が顧客らしいんで、俺はコネを作ってのし上がりたいんだよ。」
「アンタは新参だからそんな事が言えるんだよ。
このオークションを利用するなんて、金輪際、口にするんじゃねえよ。消されるよ。」
「何なのこの会は?」
ヤマが聞く。
「ま、人間競市ってなもんよ。不気味だろ。」
「確かに。これから何やるんですか?」
後で思い知る。文字通り競市だった。
「話が早いな。それを見に来たんだ。」
下の階の厳重に鍵のかかった部屋には近づかないように、と言われている。
ヤマたちの部屋はずっと離れた所だった。この階で働いているスタッフに声をかけた。
「なんかドアがたくさんあるけど、何の部屋なんスかね?」
「お、おまえたち、の、知る必要のない部屋よ。
嗅ぎ回らないで。気にすんな。」
「あんた、日本人じゃないね?
ここは外国人が多いのか?」
「そう、チベットやウイグルの人も来るよ。
言葉通じないね。」
このC国人はおしゃべりに飢えているようだ。
うまく話を引き出す事にする。
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