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第174話 佳純と喜志郎

 キシが煙たそうにタバコを吸っている。 久しぶりにキシの部屋に泊まった。  キシの精悍な顔に見惚れている。大好きだ、と佳純は思う。手を繋ぐ。 「この手で人を殴るんだ。」 「必要な時だけだよ。佳純を守るため、とか。」  首に抱きついて耳元に囁く。 「置いて行かれて、ずっとキシが欲しかった。 キシ、死なないで。」 「バカだなぁ、キシは死なないよ。」  抱きしめて囁く。佳純の綺麗な顔にくちづけの嵐。 「キシ、聞いて欲しい。この前置いて行かれたから、俺、考えたんだ。決心したって言うか。」  抱き寄せられて、佳純はずっと考えていた事を話した。 「俺、上田組の跡目を取ろうと思う。 五代目を襲名するよ。」  ギュッと抱きしめられて 「佳純がヤクザになるんだね。」 「そうしたら、キシは俺と五分の兄弟になれよ。 折半分けてずっと俺に付いていて。」 「いいのか?」  キシは黒川に呼ばれて事務所の隣の大広間に来た。ヤマとキムも一緒だ。 「今日は親父からお話がある。」 「失礼します。」 「ああ、この前はご苦労だったな。 M会の牙城での活躍、大したもんだ。」 組長は改まった様子で訊いた。 「おまえたち、本当に極道になる覚悟は出来たのか?」 「はい。」  三人ともはっきり答えた。 背中に刺青を彫った時にもう腹は決まっていた。 「俺は、ヤクザに、極道になる。 親父に命を預ける。」  黒川に張り倒された。 「預けるだと? その程度の覚悟か? 預けるってのはいずれ返してもらうって事だぞ。 そんな半端者で極道名乗れるのか。」 「すいませんでした。」  部屋の隅で猪飼辰夫が見ていた。 「俺もいつか、盃をもらいたいです。」 「ああ、辰夫も覚悟が出来たらな。」  辰夫はこの前の抗争の話を聞いて、本気で極道になりたくなった。

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