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第176話 襲名

 二十歳になるのを待って、佳純の盛大な跡目の襲名披露が行われた。  『第五代、上田組 組長 上田佳純}の襲名だ。内部外部に公表するための儀式だ。  近年、義理かけも警察の規制が厳しくなり、簡素化が進んでいる。  金筋の極道、上田組の五代目襲名は古式にのっとり、盛大に執り行われた。  畳の大広間に祭壇が整えられ 『八幡大武神』『天照大御神』『春日大明神』の 書き上げが張り出される。  上田組が博徒系のヤクザだという事だ。 白装束の霊代が盃を配り、媒酌人が御神酒を注ぐ。 「すでに覚悟は十二分におありの事でしょうが任侠の世界は厳しい世界です。  時として白いものを黒と言われても,その胸に全てを飲み込んで承服せざるを得ない厳しい世界です。一家のため、立派な漢となる決意が固まりましたら、その盃を一気に飲み干し懐中にお納めください。」  同じく、ヤマとキムとキシの正式な親子盃の契りも結ばれた。それぞれ盃を懐紙に包み大切に懐にしまった。  紋付き羽織袴の佳純は凛々しく美しく、誰もが見惚れる美丈夫だった。  背の高い肩幅の広いキシと並んで立つととてもお似合いだった。  くすぐったそうに見つめ合う二人を誰もが祝福した。  その夜、愛し合う二人の新婚初夜が近くの温泉宿に用意された。 「なんだか、照れるなぁ。初夜だって? 今までやりまくってたのに今更なんだけど。」  温泉宿の浴衣をキシがゆっくり脱がせた。キシも脱いで裸になっている。  気持ちのいい湯加減の湯船に並んで浸かりキシの背中の彫り物を撫でている。 「すごいね。キシの刺青。綺麗だ。」 「どうだ、ヤクザになった気分は? しかも組長だ。」 「ああ、これでキシと離れられないね。 俺がキシの親だ。」 「変なシステムだな。ヤクザは必要悪だ。 日本がバビロンにならないように。 任侠道だよ。」 「ヤーマン、新婚旅行はジャマイカにするか。」  今、組を留守にするわけには行かない。無理だとわかっていて、夢を語る。  佳純の腹のタトゥーに舌を這わせて 「佳純とならどこにいても幸せだ。」 「俺もだよ。喜志郎。」

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