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第4章 寄せ合う安寧 -2-
レンは湯の中で軽く肩を回しながら「そろそろ出るか」と呟いた。思った以上に楽しいリュイとの会話は、このままだと一晩中続けてしまいそうだ。
湯船の縁に手をかけ、立ち上がる。その瞬間――ぐらり、と視界が揺れた。
「あ……」
湯気の白さが妙に濃く見え、足元からすっと力が抜けていく。吐いた息は熱いのに、体の芯だけが冷えていく妙な感覚。驚くほど体は言うことをきかず、膝が折れそうになったそのとき。
「レン!」
激しい水音と名を呼ぶ声とともに、リュイの腕が迷いなく伸びた。
力強く腰を支えられ、引き寄せられる。頬に押し付けられたリュイの胸元から、鼓動の音が微かに伝わってきた。
「のぼせたか。無理はするな」
リュイの声は落ち着いていたが、鼓動の早さが焦りを滲ませている。
レンはリュイに支えられながら、ゆっくりと縁に座った。
「ご、ごめん……きゅうに……」
「謝ることはない」
そう言ったリュイが、窺うようにレンの顔を覗き込む。
リュイの濡れた髪先から滴り落ちた雫が、ぽたりとレンの頬に落ちた。
「むしろ俺が早く気付くべきだった。すまない」
「それこそ『謝ることない』だよ……」
ふっとレンが笑う。またひと粒雫が落ち、リュイの指がそれを拭った。
「顔が赤いな。吐き気はないか?」
「うん……」
ひんやりとしたリュイの指先が心地よくて、レンは小さく息を吐いた。
指先をレンの頬から額、そして鼻先へと滑らせたリュイが、小声で何かを唱える。目眩に似た不快感がわずかに薄れていくのを感じた。
「……これも、魔法?」
「ああ。応急処置はするが、治療師に見せた方がいいだろう」
そう言ったリュイに、一層強く抱き寄せられる。
「このまま運ぶ」
ざぶりと湯が跳ね、まるで軽い荷のように抱き上げられる。
視界の端がじんわりと暗くなり、レンは縋るようにリュイの肩口へと額をつけた。
「目を閉じていろ」
リュイの焦りの混じった――けれど優しい声が耳に届き、レンはリュイに体を預けてゆっくりと瞼を閉じた。
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