34 / 40
第10章 神へ至る夜 -3-
リュイは、寝台で眠るエメルを見つめていた。
エメルとの行為は、リュイにとって拷問にも等しかった。
レンの同意を得られないまま彼の体を抱くことも、せめて傷つけないようにと慎重に進めようとしたのを拒絶され、無理やり繋がるしかなかったことも。
思い出すたびに、リュイの心は重苦しい痛みに襲われる。だが、エメルの中にいるであろうレンのことを思うと、この痛みさえ身勝手な感情のように思えた。
身じろぎをしたエメルが、目を覚ました。髪を掻き上げながら上半身を起こす。彼の裸体に残る情事の痕から、リュイは反射的に視線を逸らした。
「いい朝だな」
そう言いながらも、エメルは笑みひとつ浮かべなかった。
リュイは小さく息を吐き、湯で湿らせたタオルを差し出した。だがエメルはそれを叩き落とすと、服を着ることもせず寝台から降りた。
「せめて傷の手当をさせて欲しい」
リュイの言葉を、エメルは鼻で笑った。その態度に、リュイは唇を噛むと、エメルを睨みつけた。
「お前のためじゃない。それはレンの体で――」
見えない何かに首を締められ、リュイは呻いた。
「私はエメルだ。何度も言わせるな」
「ぐっ……う……」
リュイは必死にそれを振り払おうとしたが、何も掴めず、ただ空を掻くだけだった。
「初夜を終えた朝にふさわしい余興だな」
エメルの声とともに、首を締めていた力がふっと消える。リュイはその場に崩れ落ちた。
「起きろ。こうした朝には愛を囁くのではなかったか?」
エメルはそう言うと、片手をリュイに差し出した。
息を整えたリュイがその手を取り、甲へと口づけると、エメルは満足そうに笑った。
ともだちにシェアしよう!

