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第4話 君のくれたポストカードと「いってきます」「ただいま」
君が奥さんと旅行に行く度に送ってくれるポストカードは、手元にあるのは2枚。
ひとつは、ハネムーンで行ったハワイのビーチの写真付き。トロピカルドリンク片手にアロハシャツなんか着ちゃって、うはうはしてるの丸わかり。隣で身体を寄せて笑う奥さんも良い表情。きっと優しくて良い人。君を幸せにできる唯一の人。
ふたつめは、最近行ったという北海道のポストカード。シマエナガのイラストがデザインされたかわいいポストカード。シマエナガって最近流行ってるあのまるっとした小さくて白い鳥かあ。
そのポストカードの端っこに一言だけ。走り書きで書いてあるのは君の文字。忘れられないくらい隣で見てきたから、覚えてる。文字のはらいに忠実なところ、細かい手癖。
『こいつお前に似てね? ^^』
黒の油性ペンで書かれた文字を指先でなぞりながら、君の声を思い出してしまう。聞き心地のいい低い声、ちょっと乱暴な口調。
「ほんとさあ、こういうところがさ……」
残業帰りに郵便受け見たらこれが入ってる僕の気持ちなんて考えてないよね。自由人め。まあ、そういうところが好きだったんだけどさ。
ちょっと頬を膨らましたけど、シマエナガに罪は無いので玄関先に飾るようにした。きっと部屋のクローゼットの中に隠しても、クローゼット開く度に思い出して嬉しくなったり悲しくなったりして落ち込むだろうから、いっそ毎日嫌でも目に入れる場所に置いてみたらどうかと。逆張りの法則ってやつ。効果は検証中。気分次第で外してしまう可能性も大きい。
とりあえずここ最近の僕は、毎朝シマエナガと挨拶してから家を出るようにしている。新しい相棒ってやつかも。
意外と、悪くないかも。
「いってきます」も「ただいま」も。
シマエナガのポストカードがあればなんか寂しさも減ったような。気のせいかな。
女の子になりたかったっていうより、君に選ばれるならどんな生物でも良かったっていう気持ちのほうが強いかな。
それは例えば、君の実家で飼っているボーダーコリーに生まれてたら僕は一生、心ゆくまま君と添い遂げられただろうし。
なんていう妄想をね、考えちゃうくらいは君に許してほしいかな。
そんな、できたて失恋ほやほやの僕の前に現れた人は──僕に愛を教えてくれる人でした。
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