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第25話 はじめての彼氏ができました
「あれ? 深月。なんか今日、ご機嫌だね。休みの日にいいことあった?」
ぎくり。
休み明けの月曜のお昼休み。みも先輩から鋭いツッコミ。僕は愛想笑いをして曖昧に誤魔化す。
「ええと。休みの日に欲しかった日傘を買ってからお気に入りで使うたびにるんるんなんです」
アイスティーを飲むみも先輩は、底に残った液体をストローを使って器用に飲み干す。
「へえ。それは良かったね」
「はい。今年はまだ6月なのに夏日も多くて紫外線気をつけなくちゃと思って……」
「そうなんだよねえ。梅雨でも紫外線強いし。俺も何層も日焼け止めクリーム塗ってるけど、今年の紫外線はやばい。過去一強烈」
なんだかんだ、僕の知り合いで美容とか肌ケアの話で盛り上がれるのはみも先輩くらいだ。僕は朝作ったしらすおにぎりをもぐもぐと食べながらみも先輩の有難いお肌ケア方法の解説を聞く。すると、そこに飛び入りで参加してきたのは──。
「お前ら仲良いな。遠くから見てると女子会に見えるぞ」
姿を見せたのは広報部の若手エースの夕貴部長だった。前髪を後ろに流していてTheサラリーマンという格好だ。こめかみに汗をかいている。ジャケットを脱いでワイシャツ姿で歩いてきた。
「夕貴部長。今戻りですか? お疲れ様です」
みも先輩。お仕事モードの時はすごく観察力が長けていて、夕貴部長に冷感タオルを差し出している。
「ああ。実守、助かる。お前のそういうところ、ほんと気が利くよな」
冷感タオルを首に巻きながら、夕貴部長が一言洩らすのを僕はしっかりと耳に入れ心の中でメモをとる。
『外から戻ってきた部長に、冷感タオルの差し入れ。気配り上手はお仕事上手』
最近お気に入りのペンギンのふせんにそう書いて、ぺたりとパソコンの縁に貼る。こうしておけば、見忘れない。
「朝比奈は今日もそれ、手作りか?」
不意に、夕貴部長の視線が僕の口元に向かう。しらすおにぎりを頬張っているのをがっつり見られてしまった。
「ハムスターみたいなほっぺただな。そんなにがっつくほど美味いのか」
「……はい」
僕はおずおずと頷く。すると、そんな僕の持つしらすおにぎりをじーっと見つめて離さない部長。
食べたいのかな……?
期待に満ちたきらきらした瞳に耐えきれず、まだ口をつけていないもう1つのしらすおにぎりを部長に差し出した。
「あの、これ良かったら……」
「いいのか? まだ食い足りないだろ?」
「いえ、僕は1個でおなかいっぱいになっちゃったので……」
そう言ったら、部長が目を細めて笑った。
「ありがとな。感想、後で伝える。そうだお前ら、午後いちにミーティング。会議室取ってるから、遅れるなよ」
ぽんぽん、と肩をこづかれそのまま自分の席へ向かっていく部長。そしたらみも先輩がこそっと一言。
「ねえ、もしかしてだけど部長の胃袋掴んで昇進とか狙ってる?」
「なっ……! そんなことありません。よく、部長から手作りのお弁当いいなって前から言われてたので……」
「へえ、前からねえ……」
じっとり目線、によによ笑いのみも先輩。
何かしら、絶対に誤解されてる……。
でも、説明するのも面倒くさいし、まあいっか。
あれ……? これって浮気になっちゃうのかな?
手作りごはんを部長に差し入れする彼氏を、星七くんは嫌がるかな?
考え始めたら、わーって頭がいっぱいになって、仕事中はなるべく星七くんのこと考えないように意識してたのに……。
お昼ご飯を食べ終わり、各自の席でまったりタイム。みも先輩は仮眠中。僕はこっそり、星七くんからのメッセージを確認する。
昨日、プライベートシネマで告白された時には驚いたけどすごく嬉しかった。
天国かな、ここ? って思っちゃうくらい幸せすぎた。
星七くんは今日も仕事で忙しいらしく、返信はまちまちのタイミングだけど気にならない。
だってもう、星七くんは僕の彼氏なんだから。独り占めできるんだもん。重いメンヘラにはならないぞ……!
そう心に言い聞かせて朝の返信を見返した。まだ僕が送ったメッセージに既読はついてないみたいだ。
『おはよう。今日もお仕事頑張るね。星七くんも暑いから気をつけて!』
なんかこれ、お母さんっぽい応援メッセージになってないかな?
見返したら不安になるのがわかってるのに、僕のばか……。
神様。初めての恋は僕には難しすぎます。だって相手が、国民的彼氏No.1アイドルのせなくんだから。
だけど、きっと大丈夫って確信もあるんです。だから神様、おねがい。不器用な僕をお救い下さい。
そんなお祈りを捧げる僕のお昼休みが終わった。
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