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第27話 僕の強みを夕貴部長が教えてくれた
1ヶ月というのはあっというまに過ぎていった。
僕はスキンケアブランドのフェアリーブルームのブランドキャラクターのデザインに集中して取り組む時間をもらえた。
みも先輩は主に新商品お披露目イベントに招待する企業や記者団向けのお知らせ通知や、会場の手配などを任されているらしい。責任重大だからといつもより気合い強めのみも先輩。
尊敬する先輩の機敏なお仕事ぶりに僕も良い影響を受けていたところだった。
夕貴部長が僕の席に近づいて仕事の進捗を確認してきたのは。
「どうだ? 良いブランドキャラクターはできたか?」
僕は仮案のファイルを開いて、部長に見せながら説明をする。
「フェアリーブルームはパリ発のスキンケアブランドと伺いましたので、お花や星など自然な素材を中心にモチーフとしてキャラクターデザインに入れています。例えば、この白い馬とか……」
僕はタブレットをタップして、描いたイラストを拡大表示させる。部長はふむふむと頷いてキャラクターデザインを見つめている。
「確かに洗練された白馬のキャラクターだが……悪くはないと思うが、せっかくの朝比奈の強みが薄れているような気がする」
「僕の強みですか?」
そんなの、気にしたことなかった。部長の言葉が不意に胸を深く打つ。
「ああ。お前はかわいくて親しみのあるキャラクターデザインが強みだろ? 海外で有名なスキンケアブランドとあって、畏まる気持ちもわからなくはないが……。ブランドキャラクターは着ぐるみとして登壇もすることも考えれば、もっとお前らしい柔らかいテイストのデザインでもいいんじゃないか? と言っても、俺はデザインのことに関しちゃ全くの素人だから力になれずすまないが」
部長はがしがしと後頭部をかいて苦笑いを浮かべた。僕はぶんぶんと首を横に振り、部長を見上げた。
「いえっ。とんでもないです! 部長に教えてもらえて、僕も大切なことに気づきました。この会社のブランドキャラクターに求められているのは、洗練されたデザインではなく、もっと多くの人が手に取りやすい親しみのあるデザインだと。新しくキャラクターデザインを描いてみます。よければ、また部長のご意見いただいてもいいですか?」
「……ああ。もちろんだ」
「はいっ。ありがとうございます!」
僕は気分転換も兼ねて窓際のフリースペースの席にタブレットとペンタブを持って、新しいキャラクターデザインを描き始めた。
窓の外の青空を見つめながらほっと一息つく。
何よりもまず、自分がリラックスして描いたほうが上手くイメージを絵におこせる気がするから。
僕の強み。部長が教えてくれたことそのものだ。
新商品のお披露目会までに、納得のいくキャラクターデザインを描くぞ……!
自分の魂がめらめらと炎を揺らすのを感じながら、その日はずっと絵を描いていた。
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