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第28話 癒され彼氏の星七くんは今日も僕だけに甘い
「みーつき」
「あっ。星七くん……! お仕事終わった?」
星七くんからの電話だった。僕は仕事終わり、自宅で明日のお弁当を作っているところだった。星七くんからの通話の通知を見て、急いで画面をタップ。スピーカーにして、スマホを置いて、タコさんウインナーをお弁当に詰める作業を進める。
「はあ。癒される、深月の声」
「そうかな? 僕は星七くんの声、甘くてはちみつみたいで好きだよ」
くすくす、と画面の向こうで星七くんの笑い声が聞こえてきた。
「もー、そういうところも好き。素直だね。深月は」
「そうかな?」
「そうだよ。俺の言うこと何でも聞いちゃうし、疑わないでしょ。俺以外の人にそんなに素直にしたらダメだからね」
「うん……!」
なんか、星七くんの嫉妬みたいなのが見れて嬉しいな。特別扱いされてるっていうか……。恋人同士ならこれくらい普通なのかな。星七くんが初めてだから、わかんないや。
「そういえば、お仕事の調子はどう? 企業のブランドキャラクターデザインだっけ? 完成した?」
星七くんには僕の会社とコラボすることは業務上伝えられないから、伏せている。フェアリーブルームの新商品お披露目会が大成功したら「実は僕の会社がPRしてて」とこっそり事後報告するつもりだ。
その時、星七くんどんな顔するかな?
喜ぶ? 驚く? 無関心、とかもありえるかな。けど、少しでも「頑張ったね」って言ってもらえたら嬉しいな。
「うん。あとちょっとで完成して納品できそう。今日ね、部長からすごくいいアドバイスもらって、もっといいのができそうなんだ」
「へえ、良かったね。その部長って男? 何歳くらいなの?」
あれ? 星七くんの声、少し低くなった。
「ええと、男の人で27歳だよ。広報部の若手エース部長って呼ばれてるんだ。すごく頼りになるんだよ」
「……ふうん。結構その人と話すこと多いの?」
なんだろ。星七くんの質問攻め、いつもより強いな……。
「仕事で関わるから毎日話すよ。同じ部署だし……そ、それより星七くんは? お仕事忙しいの?」
ちょっと気になって僕から会話のボールを投げてみたら、星七くんの声の調子がいつもの優しいのに戻った。さっきまでの、なんだったんだろう……。
「そうだね。今日は7月にやるファンミーティングの握手会とかサイン会のリハーサルやったよ」
さすがアイドルのお仕事。ファンサも欠かさないみたいだ。ステージの上とは、握手会やサイン会ではまた違った星七くんが見れるのかな? ちょっと気になる……。
「お疲れ様だよ。ファンの人も喜ぶね」
「うん。深月は来ないの?」
「あっ……えと?」
唐突に会話の矛先を向けられて一瞬たじろぐ。
僕が行ったら星七くん困らせちゃわないかなと思って、言わなかったんだけど……。星七くんには僕の考えはバレバレみたい。
「あーあ。せっかく今日のリハは深月が来る前提で頑張ったのになあ」
深いため息が画面の向こうから聞こえる。それはあえて大袈裟にやっているとわかってはいるけど……。
「……行ったら迷惑じゃない?」
おそるおそる、勇気をだして聞いてみた。そうしたら星七くん、あっけらかんとして答えてくれた。
「何で? 深月は俺のファンだし、恋人でしょ。好きな人には俺が頑張ってるとこ見せたいんだけどな」
「……星七くん」
感極まって泣いちゃいそう。それを察したのか星七くんが励ましてくれる。
「こら。深月。すぐ泣かないの。抱き締めに行きたくなるでしょ」
「……うっ……ありがとう」
「泣いちゃうくらい喜んでくれるのは俺も嬉しいけど……あんまり泣かせたくない」
「うん」
最後のほうは真剣な口調。
本気で泣き虫な僕のことを心配してくれているみたい。
こんなに恋人想いの彼氏がいて、僕は幸せです。一生分の幸せ、使い切っちゃったかな。
その後は、30分くらいお互いの話をした。仕事のこと、趣味、休みの日何してるか。星七くんから質問攻めにされた。
電話の最後にぽろっと一言。
「次のデート考えとくから楽しみにしててね。休みが合う日に会いたい」
「僕も、はやく会いたいな」
「……かわいい。隣にいたら今すぐにでも抱き締めるのに」
「僕もだよ。星七くんのくっつき虫する」
「ふふ、それはちょっとかわいすぎて困る」
くすくす笑って、気づけば23時。
星七くんとの通話あっという間に感じる。
はやく会いたいな。会い足りない。
もっともっと星七くんのこと知りたい。
触れたいし、触れられたい。
こんな気持ち初めてだ。
「おやすみ。深月」
「おやすみなさい。星七くん」
いつも星七くんは、僕から通話ボタンを切るように促してくれる。ピロリン、と通話終了の合図が鳴った。それが毎回悲しくて、少ししょぼんてなる。
僕はだいぶ重症みたいです。
星七くん欠乏症。
ビタミンS(星七くん)が枯渇中。
星七くんも僕のことそう思ってくれてたらいいな……なんて。
眠りにつく直前、あのはちみつみたいに甘くてとろける唇を思い出してすやすや眠れた。
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