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第32話 深月のとろけた顔、反則級のかわいさで困る(星七視点)
さっきまでキスの余韻でぽーっとしてた深月を車に乗せて、自宅まで送り届けるまでに起こったことが今日1番の収穫だった。
後部座席に2人座っていた。運転手は俺の会社の人で知らない人が乗ってきても見ざる聞かざる言わざるの姿勢を崩さないタイプの男だから心配はない。
深月は疲れ切ってしまったのか、無言でうとうとしている。俺の肩に顔を乗せるよう促せばすんなり従った。
やっぱり素直すぎて外に出したら危険だな。
俺は内心警戒心を強めながら深月の手を恋人繋ぎにして握る。にぎにぎと遊んでいたら、深月もぎゅっぎゅと握り返してくる。
ほんと小動物みたいでかわいい。押し潰さないように気をつけないと。
無自覚天然って、もはや絶滅危惧種だな。
俺の肩に頬を載せる深月の前髪を耳にかけてやる。汗で少し濡れている。けど、そんなの全然気にならない。
今日、一生懸命仕事してたんだよな。
仕事モードの深月を見ることができて、さらに独占欲は高まっていく。
……ああ、ほんと。あの夕貴っていう部長が妬ましい。こんなに可愛くて一生懸命な深月を指導する立場なんて。そんなの俺にはご褒美すぎて、仕事が手につかなくなりそう。現に、アイドルの仕事の時以外はあの日以来深月を求める気持ちが募ってきていて、今にも爆発しそうなのに。
今すぐ触れたい、抱き寄せてそのまま俺の思うがままにしたい。
はやく深月の身体に触れたくて、たまらなかった。
けど、そういうの深月は初めてって言ってたから怖がらせたくない。理性と本能の間で反復横跳びをさせられてるみたいだ。
「情けな」
思わず唇から掠れた声で本音が零れた。
自分が情けないと感じたのは初めてだった。深月と出会ってから、俺は自分の知らない一面を知ることになった。
アイドルモードONの時に、ファンから求められるキャラで独占欲とか嫉妬とか執着が強いふうに振舞ってたけど、腹の底ではそれ以上だったこと。
深月の前では、かっこつけることもできない。その無垢な目で見つめられると嘘がつけなくなる。
窓の外に流れる街灯の光を見つめながら、小さく丸くなる深月の肩を抱き寄せて耳元で囁く。
「好きだよ。深月」
「へくちっ」
「っ!」
深月のくしゃみで甘いムードが台無し。俺は苦笑しながら車に置いてあるブランケットで深月を包む。
幸い、目は覚めてないようだ。自宅に送り届けるまでは眠らせてあげよう。
さっきのくしゃみ、お返事って思っていいかな。
思い出すだけで笑いが込み上げてきてしまう。
無自覚天然キラーくんは俺の腕の中で眠っている。
その温もりが忘れられなかった。
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