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第36話 お風呂上がりのドライヤーとアイスと君(後編) (星七視点)

「お風呂上がったよ」 「ああ、深月……!?」  うそ。  2度見した。だって深月の着てる俺の服、ほんとぶかぶかで。彼シャツ状態だったから。  こんなに体格差あったんだ、とか。  深月、お風呂上がりでほっぺた上気しててかわいい、とか。  濡れた黒髪がツヤツヤだとか。  そんなことばかり考えてしまって言葉が出てこない。 「わかった。ドライヤーするからソファ座って待ってて」 「うん。ありがと」  余裕そうに振舞って見せておいて、ドライヤーを探しに行く間、心臓がどくんどくんってうるさい。耳の近くに鼓動を感じる。 「やばいな、ほんと」  あれも無意識なんだろうか。  だとしたら天性の男キラーだ。  リビングに戻ると、深月はさっきまで俺が見ていた音楽番組をじっと見ていた。 「これ、Milky Wayが出てる?」 「そう。俺らの新曲。先週放送された回」  深月は注意深くテレビの中の俺と目の前にいる俺を見比べている。なんか、小動物みたいな動きでかわいいんだけど。 「アイス食べる?」  ついでに冷蔵庫に寄って持ってきた棒アイスをチラつかせれば、目をきらきらさせて手を伸ばしてくる。  なんか子どもみたいに素直だ。 「食べたい。ソーダ味?」 「そう。ラムネも入ってるやつ。美味いよ」 「じゃあ、お言葉に甘えて……いただきます!」  袋を取ってぱくりと一口アイスにかじりついた深月。  黒猫がアイスを舐めてるみたいに、見てて癒される。  ほんとうに俺が実家で飼っていた黒猫のクロに似ている。思わず、深月の髪を撫でた。深月はドライヤーするための準備だと思っているようで、静かにアイスを味わっている。  ぷるぷるの水桃みたいな唇。ちらりとのぞく紅い舌。  無性にキスがしたくなった。けど、髪の毛濡れたままにしたら風邪ひくだろうし。  俺は自分の衝動に蓋をしてドライヤーで深月の髪を乾かしていく。気持ちよさそうに目を細める深月。ソファの上で後ろから抱きしめるかたちで髪を乾かしてあげる。  なんかこれ、ほんとに彼氏との日常って感じで幸せすぎる。  10分ほどドライヤーで乾かしたら、キューティクルちゅるちゅるのうるツヤ髪の出来上がり。 「すごい。髪の毛しっとりしてる。シャンプーとかリンスがすごく良かったんだね。あと、星七くんのドライヤーとっても気持ちよかった。寝ちゃうかと思った」  そう言って食べ終えたアイスの棒をひらひらと振る深月を見たら、抑えられなかった。 「っん!?」 「……」  無言で深月の唇を奪う。そのままソファに押し倒す。深月は暴れることはなくただ静かに俺からのキスに応えていた。  最初は優しく、なんて思ってたのに理性が吹っ飛んでもうどうでもよくなる。だから俺は数度、唇を重ねた後に舌を滑り込ませた。 「っ」  甘く息をつく深月。目を閉じて、全身を俺に預けてくれている。それにだぼだぼの俺の服。いつもとは違うギャップにやられて止まれなくなる。  ……ソーダ味のキスだ。

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