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第24話 玲乃と美容院デート(?)

 ピンポーンと玄関のチャイムが鳴り響いた。僕は姿見で自分の服装をチェックしつつ廊下を進む。 「あら。玲乃くん? 高校生になっても仲良しさんでいいわねえ」  珍しく土曜日の午後出勤のお母さんが遅い昼食のトーストをかじりながら言う。時刻はちょうど午後1時。玲乃が迎えに来ると約束してくれた時間だった。 「家が隣だからね。今年は同じクラスになれたし、母さんが家にいない日も玲乃の部屋でテスト勉強とかしてるよ」  去り際に残した言葉にお母さんは思ったより食いついた。 「まあ。そうなの。じゃあお菓子とか飲み物とか今度持っていきなさいね」  お母さんは財布から5000円札を1枚抜き取ると睦に差し出してきた。 「いや、いいよ」  控えめに断ろうとすればお母さんは僕の手を引っ張って手のひらにお札を無理やり載せた。 「玲乃くんとご飯行ってきなさい。私の奢りよ」  ふふ、と微笑むお母さんに僕も反射的に微笑んだ。 「ありがとう。玲乃と何か食べてくる。じゃあ出かけてくるね」 「いってらっしゃい。玲乃くんにもよろしくね」 「うん」  玄関先でスニーカーを履いてドアを開く。黒いグラデーションのかかったサングラスをかけた玲乃が直立不動で待っていた。 「おはよ」 「おはよう」  僕は歩き出した玲乃の後ろにぴったりとくっつきながらマンションの外に出た。目の前に1台のタクシーが待っているのを見ていると、そのドアが自動で開いた。 「さ。乗って」  玲乃に勧められるままタクシーに乗り込む。玲乃も座席に腰掛けると運転手に地図アプリを見せて行き先を伝えていた。ドアが閉まりゆっくりとタクシーが走り出す。タクシーの中は冷房が効いていてちょうどよい涼しさに僕は感じた。 「その洋服まだ着てくれてるんだ」  不意に玲乃が僕の肩をつんつんと押してきた。 「ああ。これ? 玲乃が中3の誕生日にくれたやつだよ。白いTシャツって季節問わず何にでも合うからすごい助かってる」  感謝を伝えると玲乃は唇をにんまりと緩ませて僕を見つめてくる。 「でも少しぴちぴちになってるね。背伸びたんじゃない?」  玲乃に肩周りを触れられて僕はいつものように心音が激しくなるのを感じてそれとなく逃げるように身体を離す。 「そうかな。4月の健康診断だと170センチだったよ。はあ。僕も玲乃みたく背が高かったらなあ」  途端にぶっ、と玲乃が吹き出して笑う。何がおかしいのか気になった僕は玲乃に詰め寄る。 「なんで笑ってるの?」 「ごめんごめん。そんなむっとした顔かわいいからダメ。俺は両親とも背が高いから遺伝だよ。睦が俺と同じく186センチもあったら怪獣ごっこになっちゃうよ」  サングラスを外し、目尻の笑い涙を指先で掬いつつ玲乃は微笑んできた。   その瞬間、ああ、やっぱり玲乃らしい反応だなあと嬉しくなる。  ちょっと意地悪で、でもとことん甘やかしてくれるお兄ちゃんみたいな存在。  だけど今、僕は玲乃のことをただの幼馴染だと思えていない気がする。もっと近い、家族みたいな距離感。深く考えてしまうとまた悩みだして止まらないから、僕はそこで自分の思考を断ち切った。  今はせっかく玲乃とおでかけしてるんだから、楽しまなくちゃ。  窓の外から流れる街並みは都会の中心部に迫ってきていて、人も空も密度がぎゅっと詰まっているようだった。

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