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第55話 《番外編》秘密の嫉妬(side 玲乃)
──ああ、まただ。
俺は遠くの席に座って読書をしている睦の横顔を横目に欠伸を洩らす。睦はどんな物語を読んでいるんだろう。気になる。けど、学校にいる時はお互い話しかけない暗黙のルールがある。
別に、睦に『学校にいる時は話しかけないで』と言ったことはない。けれど、繊細な心を持っている睦は俺がしたくないことは、無理やりさせてこない。そばでずっと見守ってくれるのを、俺は幼い頃から知っているから。
クラスメイトと話をしていても、つい横目に入ってくるのは睦の凛とした横顔。透明感のある肌と艶のある黒髪。特に睦の瞳は黒曜石みたいに澄んでいる。
あの目で見つめられると、そのまま抱きしめてしまいたい衝動に駆られるが、俺はそれを笑顔で耐えている。
睦はそれには気づいていないようで、放課後、家に帰るときらきらした瞳で俺を見あげてくる。高校生になって更に身長差ができて、睦の後頭部に顎をのっけてくっつくのが最近の俺のお気に入り。
──はやく放課後になればいいのに。そうしたら、人の目を気にしなくても睦に触れられるのに。
狼の一途な願いは教室の隅に落ちた。
素直な黒ポメラニアンにはまだ伝わらない様子。
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