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第61話 《番外編》俺のかわいい黒ポメとテーマパークデートに行く日(執着ウルフ視点)
ああ、もう。どうして睦はこんなに無防備なんだ。
ベッドですやすやと寝息を立てて眠る睦の前髪をそっと指で梳く。艶々とした黒髪。陽の光にあたると、いつも天使のわっかが見える。
前に美容院に連れて行ってから、だいぶまた前髪が伸びてきている。そろそろまた連れていくか、とスマホのスケジュールを確認した。
インフルエンサーの仕事をしていると、高校との両立が意外にも難しかったりする。皆の前では忙しさを見せないようにしているが、睦の前だけは別だ。
うだうだと俺の愚痴を聞いてもらったり、ぐだぐだしている姿も睦にだけは見せている。そのくらい、信頼してるから。
「来週の土曜の夜は空いてるな」
スケジュールをチェックして、該当する日に犬の絵文字を付けた。これで、犬の絵文字=睦との約束の目印になる。明日の朝、睦が起きたら来週の土曜の夜の予定を聞こう。
俺は赤ちゃんみたいに穏やかな寝顔の睦を起こさないように、そっと毛布を首元までかけてやる。
そして、今日1日で起こった数々の事件を思い起こしていた。スマホの写真フォルダを開く。そこには、今日たくさん撮った睦との写真が画面一面を埋めつくしていた。
夏休み終盤に差し掛かった今日、俺から睦をテーマパークに誘い朝から晩まで楽しんできた。
修学旅行が終わって正式に恋人になった俺たちは、ほぼ俺の家に睦が住む形に生活が変わっていた。睦のお母さんからも了承を得ている。もちろん、付き合っているとは言っていないが、勘の鈍い睦と違って、勘の鋭い睦のお母さんは俺から言わなくても睦の言動で気づいたようだった。けれど、それをわざわざ口にすることもなく、ただ黙って俺たちの好きにさせてくれる。
今、実母と実父がオーストラリアに住んでいる俺にとっては、睦のお母さんがママポジションだ。もともと、小さい頃から家族ぐるみの付き合いも多かったし。
そういうわけで、俺と睦がべったりしていても何も言ってこない。
修学旅行が終わってから、やっと互いの想いを共有できた俺は睦にこんなことを言った。
「ねえ、睦。俺、睦とテーマパークに行きたい。そこでたくさん写真撮って、お土産買って、夏休みの思い出にしたい」
俺の部屋で膝枕をしてくれている睦を下から見上げれば、少し照れたようにはにかんで笑う睦の姿が見えた。目尻が少し垂れている。睦は垂れ目っぽくてそれが余計に黒ポメみたいでかわいい。かわいいの暴力だ、まったく。
「いいよ。僕も玲乃と……デートしたいな」
きゅうん、と俺の胸が高鳴る。睦の口から、恥ずかしそうに目を伏せて「デートしたいな」だなんて言葉を伝えてくれた勇気に胸がじいんとあたたまる。
「じゃあ、約束ね」
「うん」
小指を絡めて約束をする。睦、とっても嬉しそう。たぶん、しっぽが生えてたらきっとぶんぶん振りまくってるんだろうな。かくいう俺も、もちろん振るだろうけど。
そんなこんなで迎えたデート当日。
まずは、朝から幸せすぎた。
だって睦が俺より早起きして、朝ごはんを作ってくれていたから。
「玲乃、朝ごはんあんまり食べないって聞いたから量は少なめにしておいたよ。おかかチーズおにぎり、好きだよね?」
そう言って、丸皿に載せたおにぎりを、「はい」と俺の両手に置いてくれた。
「わ……おいしそう」
ちょうど、いつもよりは食欲がわいていたので有難く食べることにした。
「んっ……おいしい!」
「そう。それなら良かった」
睦は鮭おにぎりを食べている。
やばい。幸せすぎる。朝からこんな、お嫁さ……睦の手料理で頭が働いていくなんて。
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