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第62話 黒ポメの一挙一動が可愛すぎて無理
「玲乃ーっ」
「そんなにはしゃぐと夜疲れちゃうよ」
「えへへっ」
テーマパークの最寄り駅に到着して、入場ゲートの前に長蛇の列ができていたので俺たちも並ぶことにした。夏休み終盤とあってか、想像よりも人が少なく感じられてほっとする。一応、インフルエンサーの端くれとして自衛はしているつもりだ。
お気に入りの黒いフェードのサングラス。マスクは電車の中ではしていたが、外のうだるような夏の暑さに耐えきれず外した。
睦はいたって普通の様子だ。この前、俺が中学生の頃に着ていた小さめの服をおさがりであげたらすごく喜ばれた。それに味をしめた俺は、睦を自分好みのファッションに誘導している最中だ。睦はファッションにはあまり興味がなくて、機能性を重視するタイプだ。
細身で等身も良いから、色んな服が似合う素質を持っている。小柄ながらモデル体型だなといつも思っている。腰の位置が高めで足もほっそりしている。女装させるのもいいな、なんて思いながらはしゃぐ睦を眺めていた時だった。すいすいと入場ゲートに並ぶ列が前に進む。いよいよテーマパークに入れると知って睦はご機嫌さん。今にもスキップしそうな勢いでキャラクターたちが出迎えてくれる広場に繰り出した。
「ほら。離れないように、手繋ご」
「……うん」
そのセリフ、俺が言うつもりだったのに。
最近の睦は付き合う前よりも、積極的に恋人らしいことを求めてきたり提案するようになった。成長しているなあと、孫を見るような気持ちで見つめているとテーマパークのメインキャラクターが睦の近くにやってきた。
「わっ」
ぶつかりそうになり驚いた睦は俺の腕をぎゅっと掴んできた。
まさかの愛のキューピット登場?
俺はにんまり笑ってから睦とメインキャラクターのイルカとのツーショットを撮る。イルカはファンサが激しく、睦にくっついたりハグしたりしている。イルカの中に何者かがいるのがわかっているからか、俺は急にイライラが止まらなくなり笑顔で後ろで撮影待ちをしている人にスマホを預けた。
「すみません。写真撮ってもらってもいいですか?」
「は、はいっ!」
後ろに並んでいたのは高校生くらいの女の子4人組だった。一瞬だけならいいか、せっかくだしとサングラスを外してイルカを挟んで睦と写真を撮る。
けど、イルカの背中では俺が睦の手を引いて隠れて握っていた。睦の手はすべすべしていて触り心地がいい。むにむに好きに遊んでいると、撮影が終わってしまった。
もっと睦の手を好きなだけ握っていたかったが、仕方ない。
写真を撮ってくれた子達にお礼を言って去り際、かなり大きな声で「やば。芸能人? オーラやば」と喋っているのが聞こえてすぐにサングラスをかけ直した。
この愛おしい睦とのデートの時間を他人に邪魔されたくなくて。
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