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第7話

 あの時、あの喫茶店で一磨と話してから既に三週間が過ぎた。僕は毎日スマホを見つめては、一磨からの連絡を待った。僕は、自分からはなるべく連絡をしないよう心掛けていた。多分、返信をする余裕もないだろうと想像して。  一磨は映画のPRで大忙しで、宣伝のために多くのバラエティー番組に出演していた。僕はその度ごとに録画をしては、一磨の様子を逐一チェックした。  一磨は、僕と試写会で会った時よりも少し痩せたように感じる。何故だろう。瞳にも生気がないような気がして、僕は自分のことのように心配になってしまう。  山田さんには、結局一磨と会えなかったことを正直に伝えた。山田さんは少しホッとしたようなテンションで僕にまた会おうと言ってきたが、僕は、一磨と会ってちゃんと話すことができるまで待ってくださいと伝えた。  そんなチャンスが本当に訪れるのかと疑ってしまうほど、今の一磨はとても忙しそうだった。僕は、もう二度と一磨に会えないのではないかという不安に苛まれてしまうのを、頭を振ってかき消した。  大丈夫。いくら何でも二度と会えないなんて、そんなことあるわけない。  僕は、前向きに考えようと心に決めて、就活のために訪れたラジオ局の自動ドアを開けた。  今日僕は、自分が目指しているラジオ局のインターシップに参加をする。ラジオ局内の見学や仕事体験、質疑応答などが主な内容だ。コースもアナウンサーコース、制作コース、営業コースに分かれている。僕は昔から、ラジオ番組を自分で作ってみたいという夢があったから、制作コースに重点を置いて体験しようと考えていた。  会議室で一通りインターシップの内容を聞き、他の学生とともに体験が始まろうとした時だった。 「ねえ、聞いて、今日のお昼からのラジオのゲスト、北村一磨だってよ!」  僕の隣に座った一人の女子大生が、興奮気味にそう言った。 「マジで? 私たちも会えるかな? えーめっちゃ会いたい!」  もう一人の女子大生のテンションも、一気に上がる。  その会話を聞いて僕は心臓が止まりそうになった。一磨がラジオ局に来る。どうしよう。もし会うことができたら。  僕は公私混同している自分に呆れながらも、一磨に会えるチャンスをやっぱり期待してしまう。  その時、インターシップの担当者から説明があった。 「あ、体験始まる前にお知らせします。今日俳優の北村一磨さんが映画の宣伝にいらっしゃいます。それで、特別企画として、インターシップの学生さんと番組で交流していただくことになりました。北村さんに聞きたいことを急遽アンケート取りますんで、10時までに提出してください。採用された方に、番組に出演してもらいます」  僕はラジオ局側からの突然の企画提案に面食らう。採用されたい気持ちは十分にあるが、もしそうなったら一磨はひどく驚くだろう。僕はまた一磨に悪い影響を与えそうで怖くなる。 「10時までにこのボックスに入れてくださーい」  担当者は高らかにそう言うと、ボックスをテーブルの上にドンと置いた……。

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