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第10話 世間①
その後、光映はやはり悩んだり迷ったりしながらも、どうしても継信のそばにいたい、話したいという欲を捨てきれず、今まで以上に継信に執着するようになった。とはいえ、周囲の反応のことも考え、それをあまり表に出すようなへまはしなかった。
ただ、やはり厳しい父親と言葉を交わした翌日は目に見えて落ち込んでいることが多かったので、そういったときは継信はできうる限り話を聞いてやって慰めるようにした。
継信は学校へ行った際に水をかけた人物に話をした。逃げられたり、言い逃れされたりしないように、教室の中で話しかけて対峙した。言いたいことがあったら直接言葉で言ってくれ、という継信に対し、終始相手は無言ではあったが、周囲の「なんであの暗いヤツにあいつ詰められてんの?」という空気に耐え切れなかったようで、話の途中で「もうわかったから!」と言って席を立ってしまった。
まあ、たぶんこれで変なことはしない、かな?と思いながら席に着けば、成り行きを見守っていたクラスの生徒からの視線が刺さる。説明するようなことでもないし、と居心地の悪さは感じたが継信は黙っていた。継信がこれ以上何も言わないので、クラスの生徒も引き下がるしかなかった。
一方、光映も自分の周りにいる友人たちに改めて継信の話をした。小さいころから一緒にいる大事な友人だからいじめられたり嫌がらせを受けたりしていないか心配だ、先日は水をかけられていた、次に似たようなことがあったら容赦しないと考えている、と語気荒く語った。
光映のその様子に何かを感じたのか、周りにいる人々は特にそれについて何か言及することはなかった。
このようなことがあった後、二人は金曜にだけ一緒に昼食をとることにした。継信は念願の弁当を作ることができて、心の中で快哉を叫んだ。光映の好きそうなおかずを考えて作ったので、同じ弁当を食べている母や妹には「なんか最近お弁当豪華になったねえ」と言われ、内心ちょっと焦ったのは秘密である。
そして金曜だけ、どちらかの家で一緒に喋ったり宿題をしたりした。金曜は陸上部の部活が休みだったからだ。その際、いい雰囲気になったらキスをしたり、陰茎の擦り合いをしたりすることもあったが、まだ最後まではしていなかった。やはり自宅というのは落ち着かないし、二人の心もしっかり落ち着いていなかったからということもある。
そうこうしているうちに夏休みになり、光映は部活三昧になってしまい、ほとんど継信と会うことができなくなってしまった。近くで行われた県大会には継信もこっそり応援に行ったが、遠征や合宿などについていくわけにもいかない。継信は継信で、成績不振を心配された結果申し込まれていた夏期講習にぶち込まれ、その合間に光映からの連絡を待つだけの日々だった。
もう少しで夏休みが終わる、という頃に、ようやく光映の部活の休みの日と継信の予定が空いている日が重なった。
その日は継信の家で過ごした。外に出かけても暑いしイチャイチャできない、ということで結局「おうちデート」になったのだ。継信は久しぶりに見た日に灼けたたくましい光映の身体を見てドキドキした。
そっと服を脱がせて現れたたくましい身体が愛おしい。継信は光映のからだ中に口づけた。光映は恥ずかしがって嫌がったが、普段押しの強くない継信は光映との身体のふれあいの時だけは、やや強引だった。
「かわい、光映の乳首‥」
そう言って強く吸い上げられると、下半身に直撃するような疼きを感じて光映はおろおろしてしまう。過ぎた快楽に、自分がどうなってしまうのかわからなくて不安になる。また、いつか継信が正気になって、何でこんなごつい男を抱いているのかと思ってしまわないかといつも不安だった。
そう思ってなるたけ身体を小さく縮めようとする光映が、継信は愛おしくてたまらなかった。光映の身体だから好きなんだ、いつも光映の身体を愛撫するとき継信はそう囁いて安心させようとした。光映もその言葉を信じたいとは思うのだが、なかなか難しい。
継信は、いつも優しく光映に愛を囁いてその頑なな心をほぐそうとしてくれた。
「ちんこ、硬くなってきたね‥」
そう言って継信は迷いなく光映の昂った陰茎を口に入れて扱く。温かく柔らかい口腔に含まれればすぐにそれは弾けそうになった。だが、継信はゆっくりと追いつめるようにして舌先で愛撫し、光映を焦らすようにかわいがった。そうしながら光映の後ろの孔にも指を滑らせる。二人で会う前には、いつも光映は後ろの準備をある程度してから来るのだが、いつかその準備は継信が全部したいと主張していた。あんなもの他人にさせるもんじゃないと光映は固く拒否するのだが、こういう身体のふれあいになると必ず継信にねだられていた。
そんなことまでしたいと思ってくれるほど、継信は自分を好いていてくれるんだろうか、と考えると光映は嬉しかった。かといってそれをさせるかはまた別の話だったが。
「光映‥」
「ん、ぅあっ、」
後ろに挿入っている継信の指が、光映の中の少しふっくらしたところを挟んで扱くようにする。びりびりと追い上げてくるような快感に、思わず光映は腰を揺らした。
「あ、あぁ、継信、‥挿れてほし‥」
後孔を長く愛撫されてじんじんとした快楽が身体中を包んでいた。特に下半身に溜まっていく疼くような感覚がじりじりと身の内を焦がす。
もっと、熱く、太いもので胎内を犯されたい。
何度も玩具で後ろを慰めている光映にとって、継信が与えてくれる快楽は嬉しい半面、たまらなくもどかしかった。早く、継信自身と繋がりたい。
「おれも、光映の中に挿れたい‥いっぱい、ここをおれのちんこで擦ってあげたいよ」
継信は熱い息を吐きながら、光映の耳元で囁き、その耳殻を舌で辿った。ぞくりとする刺激に光映は後ろがきゅうっと締まるのを感じた。継信が耳元でふふっと笑う。
「きもちい?光映が感じてるの見るの、おれ好き‥」
継信はそう言って、いつも光映を快楽の底に突き落としてくる。何度も達しながらも、こんなことをしてていいのか、継信にこんなことをさせていていいのかという葛藤が光映の心の中からは消えなかった。
継信の家から帰るとき、お互いに離れがたくなって思わずキスをした。その時、玄関のドアがいきなりガチャリと開けられた。
二人が抱き合って、キスを交わしているところを、継信の母親が見てしまった。
光映はバッと継信から身体を引いた。心臓が痛い。あまりにバクバクしていて身体から飛び出しそうだ。胃がキリキリする。めまいがして目の前のものがはっきり見えない。
「‥光映、君‥?継信、あんた‥」
どう切り出せばいいのか、わからないような継信の母親の声が光映の耳に届いたとき、光映は何か考えるより早くその場に土下座をしていた。
「すいません!すいません、すいません‥継信は違うんです、俺が、俺のせいなんです、すいません」
突然土下座した息子の友達に、継信の母親は第二弾の衝撃を受けて再び言葉を失った。継信はさっとしゃがんで光映を立たせようとした。
「違わない!おれは光映が好きなんだ。ずっと、ずっと好きでやっと両思いになったんだ!‥息子が男を好きって、嫌かもしんないけどおれは、」
「継信」
母親は継信の言葉をさえぎった。そしてしゃがみこんでいる光映にも声をかけた。
「光映君も。ちょっと話をしよう」
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