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温かいのはマフラーだけじゃない

森屋は優しい。 その優しさに何度となく惚れ直していることは内緒だけれど、最近さらに惚れ直す出来事があった。 「蒔田、寒くない?」 「大丈夫」 この間蒔田がくれたマフラーは温かい。 それは身体だけでなく、心まで温めてくれるから寒くない。 母ちゃんには素直にクリスマスプレゼントで貰ったことは言った。羨ましがっていたけれど、これは俺にくれたものだから貸してなんてやらないんだ。 「森屋こそ大丈夫?」 「俺はカイロ貼ってるから平気」 そう言って森屋はお腹を叩いて笑う。 お腹に貼ってあるのか……と思いながらもそう言えば森屋は冷え性だったなぁとぼんやりと思い出す。 まだ付き合っていなかった頃、偶然触れた森屋の手の冷たさに驚いた記憶がある。 今も冷たいのかな? 「えい」 「うぉ!」 思い切って森屋の手を掴んでみたら、やっぱり冷たくて身体が一気に冷えた気がした。それでも何故か心だけは温かいのは森屋に触れているからなのかもしれない。 「ど、どうした?」 「ん? 手、繋ぎだけなっただけ」 今どき男同士で手を繋いでいても微笑ましい目で見られるだけ。良い時代なのかわからないけれど、普段から俺達の距離は近めだから学校のやつに見られても気にはならない。 「……俺から手を繋ぎたかったなぁ」 「森屋、俺のこと大事にしすぎ」 「大事にしたいじゃん」 大事にされすぎて正直俺のほうが焦れている。 もっと強引にコトを進めても良いのに、なんて思ってしまっているなんて多分森屋は知らない。俺だってつい最近そう言った願望が芽生えたことに気づいて戸惑ったばかりだ。 手を繋いだのはこれが初めて。 森屋は自分から繋ぎたかったと言ったけれど、俺だって好きな相手の手を自分から繋ぎたい。 だから、これで良い。 「森屋」 「んー?」 「キスしたい」 「……ばっ……!」 「ダメ?」 「まだ早い!!」 ねだるように見つめてみたけれど、森屋の顔が赤くなるだけで想定していた答えが返ってきて思わず笑ってしまう。 そうだよな、森屋はそういう奴だ。 本当に森屋は俺のことを大事にしすぎだ。 でも、それが心地良く思ってしまう俺もいるわけで。 まだまだ先に進むのは難しいな、なんて思いながら握った手に少し力を込めた。

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