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第3話

蒔田はとてもモテる。 顔も良ければ性格も悪くない、頭もそこそこ。そして運動部で背も高い。 体育祭の時なんか蒔田を応援する黄色い声で溢れていた。 そんな蒔田が俺の恋人なのだ、多少、いや、かなりの優越感を感じてしまう。 「奇跡だよなぁ……」 「何が?」 「蒔田が恋人なの」 子どもの頃から好きだった。 あの頃から蒔田はキラキラしていて、みんなの中心にいた。明るくて優しい蒔田はモテたし、今もモテる。この間も下級生に告白されてるのを見かけた。 「もしかして不安になった?」 「そりゃー……まぁ」 「俺、こう見えて一途だから大丈夫。好きなのは森屋だけだよ」 ふふふ、と蒔田はこの間あげたマフラーに顔を埋めて笑う。俺よりも少し高めの身長のくせに一挙手一投足が可愛く見えるから不思議だ。 おそらく、惚れた弱みと言うやつなんだろうけど。 「俺からしてみたら森屋が俺の恋人でいてくれるほうが奇跡なんだけど」 「はぁ?」 「智春くんは忘れてますからねー」 あはは、と蒔田は楽しそうに俺の名前を言って笑う。俺を揶揄う時はいつもそうだ、下の名前を呼んで楽しそうにけらけら笑う。 そうやって揶揄われること自体も俺は嫌いじゃないんだが、蒔田はずっと俺が何かを忘れていると言い続ける。 「いい加減教えてくれよ」 「嫌だよ〜自分で思い出して」 「もう降参」 「まだまだ」 思い出さない俺に怒るわけでも呆れるわけでもなく、ただ“思い出して欲しい”と願う蒔田は健気なのか、それとも意地悪なのか。 「思い出すまでそばに居るし、思い出してもそばに居るよ」 「……それってプロポーズじゃん」 「そう聞こえたならそうなんじゃなーい?」 楽しそうに笑う蒔田に何も言えなくなってしまう。 さっきの言葉がプロポーズに聞こえないほうが無理ってものだろう。でも蒔田にその気があるのか無いのかは定かではない。 「あ、ちゅーしてくれたらヒントあげられるかも」 「キスはまだ早い」 「えぇー!」 「そう言うのは段階を踏んで」 「この間、三船と棚倉が空き教室で……」 「うちはうち、よそはよそ!」 三船と棚倉のことは気にしたら負けだ。 アイツらは少し様子が違う。近づかない“何か”があるし、それを知ろうとするのを拒まれているような気さえする。 とにかく俺らには俺らのペースがある。 「だと思ったよ、ちぇっ」 拗ねたように唇を尖らせる蒔田に少しだけ、本当に少しだけ俺の理性が負けそうになったのは内緒の話だ。

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