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第1話 待ち侘びた再会
鉄筋コンクリート製の、三階建のタワー。
その屋上に春颯風が吹き荒ぶ。
だが、腹ばいでスナイパーライフルを構える鷹也にとっては瑣末なことだ。
銃身を支えるトライポッドのお陰で銃口がブレることもなく、視界を妨げるものは何もない。
未だ冷たい風は高揚した体を落ち着かせてくれる。
そして、静かな闘志に酸素を送り込んだ。
『補助B班、対象を四台確認。たちばな三丁目交差点を西に進んでいます』
左耳に着けたインカムから低く潜めた声が響く。
『補助D班も確認。こちらも四台。富士見が丘交差点を南に進行中』
『こちは補助A班。和泉が丘交差点を東に進んでいるのを確認。六台です』
『こちら補助C班。仲町交差点を北に進む対象五台を確認』
続けて四方に散った他の補助班からも報告が入る。
鷹也は知らされた方角のひとつ、自身の正面に視線を向けた。
タワーから五キロメートル先、道行く人も、走行する車もない街の中を、黒塗りのバンが六台続いて走っている。
その先頭車両の助手席。
死神のような全身黒づくめの服に、黒い防弾チョッキと防弾ヘルメットを身に纏っている男。
勇ましく釣り上がった眉に、切れ長の目。
その瞳には義憤が燃え盛っていた。
真っ直ぐに伸びた鼻筋の下には薄い唇が横に引き結ばれている。
ふと、燃える瞳が鷹也を捉えたような錯覚に陥った。
――見られている。
彼の視力ではこちらは見えないはずだ。
だというのに、視線が交わったように感じた鷹也の心臓はドクリと跳ねた。
ザワザワと肌が粟立ち、全身の毛が逆立つ。
自然と銃把を握る、フィンガーレスグローブに包まれた手に力が入る。
これは忌避でも恐怖でもない。
純然たる歓喜だ。
七ヶ月ぶりの邂逅。
それがこんな形であることは最初から知っていた。
この時が早く来ればいい。
何度そう思ったのかわからない。
だが、同じくらいこの日が来ないでほしいとも思っていた。
彼に刻みつけられた世界の真実が、正義が、信念が――そして愛が。
鷹也に仲間を裏切らせるのだ。
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