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第2話 とりあえず飯でも……?(4)
「たまには夜遊びも楽しいか」
男は俺の携帯を受け取った。
男から携帯を返されると、そこには赤崎 星一(あかさき せいいち)と同乗者の欄に名前が入っている。
「星一さん、めっちゃかっこいい名前ですね」
「名前だけや。しがないおっさんに似合わん」
「そう? 芸人っていうか、なんかそういうのに向いてそうな覚えやすい名前じゃないですか」
次のページに進むと支払いのページになった。往復8800円かける二枚。本当に行くんだと思うと立ち止まりそうになる。旅行ってこんなに簡単にできるものらしい。自分は本当に旅行をするらしい。
旅行をしなかったのは、目的地がない他にも、一緒に行く人がいなかったというのもある。自分のための旅行に重たい腰はあがらないけど、誰かの目的地に相乗りするなら。そんな甘えを全然知らない人にしている。自分の生活圏外の人だからこそ気をつかわなくて都合がいい。嫌っても嫌われても恨まれても大丈夫。そんな人間じゃないと旅行に行けない自分は性格が悪く臆病だ。自分で軌道に乗せたのに冷静になると、そんな自分に引いている。
「あっ、コンビニついたわ。振込できるんちゃう?」
大きな道路が見えた。男の指さす先には緑と白と青の看板がある。夜行バスの支払いの選択肢にはコンビニ支払いがしっかりとあった。
旅行が始まる。自分が誘ったはずなのに戸惑っている。旅行はしたかった。みんながいいっていうから、一度は経験しておかないと後悔するかもしれない。そういうを後悔はつぶしておきたい。
「できるけど、行く気満々じゃん」
「行くと決めたら、楽しまな損やろ? 何気に大阪ひさしぶりやわ。しかも観光で大阪ってめっちゃ新鮮」
「星一さんも、目的が旅行になってますよ」
「そう。旅行が目的で、会えたら会う。それぐらいの感じやったら、もう一回、チャンスがあってもいいかなって」
「本当は会いたいんですか? 会いたくないんですか?」
「どっちかわからんくて、もやもやするから、ならいっそ会ってみようか、そんな感じ」
「こんな半誘拐みたいな旅行で明るいですね?」
自分が強引に誘ったのに、もう星一さんの方が乗り気であっけにとられる。
「半誘拐?!」星一さんは笑った。よく笑う人だ。そういえばお笑い芸人ってよく笑っているイメージだ。「おれ、最近、全然あかんことばっかやってん。今日もバイトで怒られたし。だから旅行しよ。こんな意味わからん旅行、現実逃避にばっちしや」
「たしかに」
俺もつられて笑った。
目の前の信号が青く点滅し始めた。
「信号変わるやん! 走ろ」
言ってすぐに星一さんは走り出した。点滅信号で走るなんていつもは絶対しないのに俺も走って横断歩道を渡った。
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