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第6話 最初は裸のつきあい(2)

 しっかり温まった体はしばらく暖かい。そんなことも久しぶりで、服を着るのが億劫でのろのろと着替える。 「実際に並んでいい大人のパンツがおソロはちょっと恥ずかしいんやけど」  おソロと言ってもコンビニの無難な黒のボクサーなので、意識してもおソロ感は少ない。だからこれはフリだとわかる。 「俺の方が恥ずかしいです」 めんどくさいのに誘われて茶番にのってしまう。 「そう言われたらおソロのままでいたくなるよな」 「早く服着てくださいよ」  瓶の牛乳をすすめられるがままに飲む。ぶ厚い瓶の口当たりが牛乳の味をまろやかにしているのかうまく感じた。  生乾きの髪で外に出た。星一さんは迷いなく歩く。梅田は知らないと言っていたけど、もう目的地への地図は頭に入っているらしい。  横道に入ると商店街のようだった。商店街といっても飲み屋ばかりのようで、どこもあたりまえのように閉まっている。夜ならばネオンが歓楽街のにぎやかな部分だけを照らしていたんだろうけど、朝の光は外灯についたかざりの古びも、店の看板のハゲや汚れも照らしてしまっている。夜があけて旅行ハイも少し落ち着いたそんな自分の気持ちと同じような気恥しさがある。 「静かですね」 「朝やからな」  知らない街をただついていく。全然しらない人なのに無防備に全部をあずけてしまっている。ベビーカーの中にいるみたいに。 「全然ひといない」 「朝やからな」 「全部朝で解決するじゃん」 本当に適当な会話だ。何を話しても流されていく。 「結局、朝は何食べるの」 「うーん、朝食っぽいもの」 「星一さんて本当に適当ですね」  何も考えずに、不用意に無責任に喃語みたいに言葉を放り投げている。適当なことも、話したくないはずの本当のことも、この人に話すことをいつのまにか自分は許してしまっていた。人と話すのは好きではなかったはずなのに、だらだらと漏らしてしまうのは、明日には別れる人だからのはずだ。だけどそれだけなのか。 「俺、本当はこんなしゃべる奴じゃないんですよ」 「そうなん? もしかしておれに気使ってめっちゃしゃべってくれてたん? ありがとう」  勝手に解釈されてお礼を言われた。 「全部違います」  雲の切れ間から日が一瞬さしてきて太陽を見上げるとあくびが出た。うっすらと眠い、うっすらと酔っている。 「星一さんって朝食似合うね?」 「そんなん初めていわれたけど」  俺は星一さんが歩く横をあくびをかみころしながらついていく。 明日になれば知らない人なのも重要だけど、こんなにも気を抜いてしまうのはこの人だからかもしれないと思った。

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