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第7話 モーニングはいいにおい

飲み屋街を抜けてしばらく何もない道を歩いたので、今更ながらお互いに自己紹介まがいの事をした。  星一さんは俺の6歳上で32歳。主にコントをしていたお笑い芸人だったけど、解散したから暗中模索。 「売れない芸人はたいへんですね」 「たいへんたいへん。相方と別れたばっかやしな」  少しおどけた声色。どんな時も少しおどけた風にきこえるのはバラエティでしかきかない関西弁だからだろうか。 「相方さんに未練とか恨みとかってないんですか」 「もうどうにもならへんからな。考えてもしゃーない」  星一さんは本当にもう過去のことと振り切ったようにきっぱりと言い放つ。  人のいない大きな公園を抜けると複数車線の道路についた。  目の前では商店街の文字と絶妙にリアルで不気味な人形が迎えている。  道路をわたり商店街に入る。 「かわった色の鳥居」 「な、」  商店街の頭上に、鳥居が一定の間隔で並んでいる。まだ商店街のガレージは軒並みしまっていた。町の商店街はもはや機能していない地域もあるのだろうけど、よくみるチェーン店があったり看板が新しいものも多く、寂れてないことをうかがわせた。  星一さんが右に曲がったのでついていく。ずっと先まで商店街が続いている。 「生きてる商店街にしてはでかい、というか長い」 「そう日本一長いらしいわ。入ったところが真ん中ぐらい」 「長いけど、本当にただ長い商店街ってかんじ」 大阪名物が多くあるというわけでもなさそうだ。商店街といってもさっきの飲み屋ばかりの歓楽街の色が濃いものでなく、ファミリー向けの飲食店や百円均一などで地域に根付いた商店街と感じた。 「確かに。大阪やとようテレビでロケとかするから実は来てみたかってんな」 「来たことなかったの?」 「そうそう、だから旅行プランに組み込んでみた」 「よかったね。だいたい閉まってるけど」 「朝やからな」  閉まっているけども、見える景色の話をしながら商店街を歩く。終わりが見えない商店街が続く中、開いている喫茶店があった。 「あ、やっぱあった。こういう商店街は朝早いモーニングある喫茶店があると思っててん」 なかにはすでにお客さんがいて、コーヒーの香りがただよってくる。 「あっ、そういう」  閉まっているが観光目的で商店街を歩いていると思っていたけど、朝食が目的だったらしい。 「今日、めっちゃ歩くから、朝しっかり食べとこ」  タイルの壁の古風な喫茶店は外も古風だけど、中もいかにも昔ながらの純喫茶という趣だった。二人ともモーニングセットを頼むと、おそろいのトーストとハムエッグとコーンスープが出てくる。こんな喫茶店でモーニングを食べることはないので、旅行の特別感に気分が上がる。ベーコンはカリカリ、バターがたっぷり目に添えられているからトーストに贅沢にのっける。ぶ厚いトーストは外はサクッと中はもっちりとしていた。ちゃんと焼いたトーストなんて何年ぶりに食べただろう。 「このトーストめっちゃうまいな」 「すげぇいいにおいする」 食パンはとりあえずお腹を埋めるものという認識だったけど、おいしいものもあったようだ。  慣れないフォークでベーコンを刺すとカチャリと金属音がした。向かいでは星一さんが目玉焼きをなかなかフォークで持ち上げられなくて苦戦している。パッと目が合って笑いあった。 「そういえば、相方さん連絡したんですか?」

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