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第7話 モーニングはいいにおい(2)
朝食は食べ終わりコーヒーを飲んでいた。
「いや、してない」
「早く連絡しないと来た意味ないですよ」
「いや、おれが来たいって言ったんちゃうけど。もはやその目的も忘れてたし」
「今日、でも会えるんでしょ?」
「たぶん」
「たぶん?」
問うと星一さんは携帯を出した。メッセージアプリを開くと会話の一文を読み上げる。
「明日、おまえの相方と飲み会いつもの店であるけど、喧嘩別れのままか?」
日にちは昨日のもので、星一さんは既読無視をしている。
いわく養成所から大阪時代の親しい同期がいて、相方は今日その同期たちと飲むということだ。星一さんと仲のいい芸人もその席にいて連絡が来たそうだ。
「何時かは聞いてないけど新世界の知ってる店やから、わざわざ詳細聞かんでも行ってドンでいいやろ」
「そんなの賭けじゃん」
「だから賭けでいいんやって、そんな絶対に会いたいわけじゃない」
「でも、もう来ちゃってるじゃん」
「それはそうやけど」
煮え切らない星一さんは残り少ないコーヒーを音と立てて飲む。
「本当は会いたくない?」
心配する仲間がいるってことは絶望的な仲違いではなく、遺恨が残る別れであったと推測できる。俺が前にいたバンドの一人がサボり癖あり、一人は飛んで、一人が警察のお世話になり、俺も女とやらかしてて、ラインに罵詈雑言が並び解散したような感じではないはずだ。
「いや~~、全然、会いたくないねんけどな、なんなんやろうな」
初めて会いたくないと言葉にした。実際、節々に仲間に言われているから仕方がなくという感じがしていた。
「いつからコンビ組んでるんですか?」
「普通に養成所からやな。おれがフリータ―で19才の時で、相方が大学中退で20やったかな? 一個上やねん」
「じゃあ、10年以上の付き合いか、長いですね」
これまで10年以上の付き合いの人が家族以外でいたことがない。クラスが変われば友人が変わり、バイトもころころ変え、バンドも渡り歩いた。居場所を変えるともう前の居場所の人とは連絡を取ることはない。恋人といえる恋人もころころ変えるし、そもそも恋人と言えたのかもわからない。だから10年の付き合いの想像が全くつかない。
「十年なんてあっという間やったわ。ほんまに。もう三十路をとっくに過ぎてるとか信じられへん」
「三十路って久しぶりに聞いた」
カラカラとこれも久しぶりに聞いたような鐘の音がしてお客さんが入って来た。新聞をもって入って来たおじさんは古き良き時代を風化させない使命を背負ってるような風格がある。
「おれも三十路とか普段使わんけど、こういう場所がおれに三十路という哀愁漂う言葉を使わせるのかもしれん」
ちょっときざったらしい言いかたと渋めのつくった低音で星一さんは言った。
「場所に対して渋みが足りてない」
「確かにな~。平成うまれのゆとりやし。若ないのに若手で難しい年ごろよ。そろそろでよか」
すっと星一さんは伝票をもって立ち上がった。
ついていくとお会計一緒でと言って伝票を出している。
「会計別でいいですよ」
「いいよ。安いとこやから最初ぐらいは払わせて。この旅行で最初で最後な」
そう言いながら星一さんは手持ちのトートバッグの中に手を突っ込み荒らしている。
「いや、まって、あれ」
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