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第8話 幸先の悪いスタート?
どうにも挙動がおかしい。最初は手を突っ込んでるだけだったけど、足をあげてカバンの底を浮かして財布を探しているが見つかる様子はない。
「うわ、ないわ、何らかのペイつかえ、ませんよね……」
手で探しつつレジのあたりをきょろきょろして店員に話しかけるが、電子決済は使えないと返事されて苦笑いになった。
「とりあえず俺、払うんで出ましょう」
「ごめんな~~」
現金で払い終えて外に出た。まだ商店街は閑散として朝の光だけが充満している。その晴れやかな光に見せびらかすように星一さんはカバンの中のものを道に広げていく。トートバックはA4の紙が余裕で入るぐらいの大きさはあるが、カバンの中にものはあまりはいってない。
「ないわ」
なぜかきりっとした顔で道に並んだ私品を見せびらかすように手をひろげた。
「えっ、なんで決め顔してんの? ほんとうにない? ポケットとかも見た? えっ、どうしたら? 現金いくら入って……、それよりカードもってるなら止めないと」
最優先はカードを止めることだろうか。日本だから財布は警察に届いてると信じたいけど、大阪の治安状態にいいイメージはない。今日は酒が薄いからよく頭は回るはずなのに、自分に経験のないハプニングで最適解がわからない。
「めっちゃ、あせってるやん。そんな現金は入ってないし、カードはほんまは止めた方がええんやろうけど、暗証番号わからんと使えへんし、あれ止めたら再開すんのめんどいやろ」
あせってる俺とは正反対に星一さんは出した物をのんきにカバンにつめなおしてる。
「だって、あせるでしょ。財布どこまでもってた?」
「最後に使ったんは電車降りるときに財布に入ってるスイカでタッチして、それはカバンにいれたと思う。バスで荷物上に置いて漁ったからその時出てしもたんちゃうかな?」
そういえば、カバンを荷台に置いてから携帯を出すか出さないかでガサガサしていた。口が広く留め具がないトートバッグからこぼれるというのはありえる話だ。
「それだ、バス会社に電話して」
まだ道に置かれていた星一さんの携帯を拾って渡した。
「めっちゃせかすやん」
「逆になんでそんな悠長なんだよ」
しっかりつっこんでくる星一さんにイラついて加工しない感情のままで言葉を投げる。
「おれ、財布たまになくすし。あせってる時ほど平常心が大事やん?」
財布はたまになくすという口ぶりでなくしていいものではない。大事やん?の語尾が独特の響きをもっていて妙に腹が立った。
「それ! そこに電話して!」
星一さんは俺のイラつきを微動だにせず、検索にもたつく。横から指示して、問い合わせ先を見つけさせた。電話するとすぐにつながったようだ。星一さんの話す言葉から財布が見つかり、中の免許証まで見てもらい照合できたことが推察できた。その会話が全て標準語に近い言葉使いで新鮮だ。そういえばプライベートで関西弁は出ないと話していたなと思い出す。
「あったわ、よかった」
「どこにあるの? 取りに戻ったらいいの?」
「えっ、いいよ」
星一さんはなぜかびっくりした様子で手を振っている。
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