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第9話 二人で歩こう
電話で説明された夜行バスの事務所に行くと財布が無事帰ってきた。時間のロスがあったので電車に乗って大阪城に行こうかと聞かれたけど、大阪城はカットして徒歩でなんばを目指すことになった。
「電車に乗ってもいいんやで、まだ酔い止めあるし」
マップで確認しながら歩く、せめて観光的な道にしようといろいろ探してくれてるようだ。
「歩く方が旅行感でるしいいよ」
「気いつかわして、ごめんな」
「めっちゃ謝ってくれるじゃん」
「だって見ず知らずの人間誘って旅行なんて普通ちゃうやろ? しかもはじめての旅行。大切なことなんやろなって」
「そんな大切なことじゃない」
「そう? ほんまに」
「そもそも前提として振り回されてる旅行なのに、お人好しすぎ」
「全然そんなことないで。なんかのネタになるかなってほうが実は大きいし、意味不明な言動するやつっておもろいやん」
「意味不明って思ってたの?」
「めっちゃ思ってるわ。でも、酔ってる人間助けるいいやつって前提もあったし、ギター見てて売れないミュージシャンっていうのに勝手に親近感わいてたから、楽しく旅行したいって思うんかな」
ふと会話がとぎれた。繁華街を抜けていわゆるビジネス街というところに出たのか店が急になくなって同じようなビルがたちならぶ。窓が前面に並ぶビルがあちらこちらで太陽の光を跳ね返している。
「すごい都会やな」
「ほんとに」
住んでいる東京の方が都会なのだろうけど、決まったバイト先とスタジオを周回してるのでこんな都市然としたビル街には用がない。星一さんも主な行動範囲とは違う景色なのかきょろきょろと見回してる。
途方もなく高い建物はそこに入らない人間を威圧しているかのように隙が無い。
「このビル全部人が入るためにあるんやで、人っていっぱいおるよな」
「ばかみたいな感想ですね」
「大阪ではバカじゃなくてあほの方がいいんやで」
ほんとばかかあほみたいな会話だなと思いながら、とぎれては思い出したかのようにぽつぽつと短い会話をしながら歩いた。大きな川が続けざまに流れるそれをぼんやりと眺め歩き、車のナンバー別での運転の粗さを聞き、変わった建物があると市役所や美術館や銀行なんてざっくりとした説明を聞いた。
疲れてきたからお茶でもと、コンビニのイートインで缶コーヒーを飲んで、なぜかそれも旅を感じた。
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