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第10話 道頓堀は思い出の地(2)

 また違う商店街に入った。とても狭い道に、看板だらけの店と食器だらけの店と、大きな料理器具だらけの店と専門的な店が並ぶ。変わっているけどあまり興味がある分野ではなく、商店街はすぐに通り終えた。 「もう主要なところはあらかた通ったかな。ちょっと歩くの疲れた? どっかで一服しよか。それか、ちょっと早いけど新世界行くか? ……新世界は喫茶店とかあるんかな」  少し広めの道路の端っこで立ち止まる。  星一さんの携帯を覗き見て時刻を見るといつの間にか時間がたっていたのがわかった。 「新世界って喫茶店ないの?」 「あるやろうけど、飲み屋ばっかりのイメージやな。あっ、阿倍野の方に行けばあるか。動物園とかもあるけど行く?」 「行かない」 「そやな、公園とか美術館とかも興味なさそう。無駄に高いビルでも上るか?」  星一さんが携帯で検索をかけているのを横で一緒に見ていた。やっぱり行くところを決められはしないけど、スクロールしていく情報を一緒に眺めてる。そういえば、旅行に行くってこういう計画を立ててる時間が楽しいと風の噂で聞いたことがあったかもしれない。 「通天閣あるけど、通天閣って行ったことないわ。あれなんなんやろ」 「高い塔ってだいたい電波的な奴じゃないですか」 「そうなん? 電柱のおおきいやつ?」 「たぶんそう」 適当なことを言っている自覚がある。今日で確実に星一さんの適当なノリがうつってしまっている。 「あれっ。赤崎じゃん」 携帯から顔をあげると帽子にマスクで小柄な男がいた。 「あっ、えっ。米沢(よねざわ)さん、お久しぶりです」 「久しぶり。こんなところでなにしとんの、仕事?」  男は俺を怪訝な目でみている。 「いや、旅行に来てまして」 「大阪に旅行? 新しいな」 「知り合いと来てますんで」 「あっ。そうなん」 男はさっきまで俺を見定めていたのに興味がなくなったというように顔をそむけた。 「赤崎、解散したんやろ。どうするん。なんかめど立ってんの」 「いや、まったく。考え中です」 「虎太郎(こたろう)はやめるんやってな」 「はい。そう言ってました」 「お前、全然ひきとめへんかったんやろ? 虎太郎大変やったてきいてたし、もったいないわ。虎太郎やったらこっちで漫才してで上いけたのに。お前が東京連れていったんやったらもっと支えらなあかんやろ。お前ひとりでお笑いやっても花ないし無理やで」  男は嫌悪を隠さずつらつらと述べた。 「まぁ、考えます」 「東京はそういうすかしてる方がええんかもしれんけど。じゃあな」  男は言いたいことをいうだけ言うと帽子を深くかぶりなおしさっさと歩いて行った。

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