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第12話 日本橋は欲望の街
連れて行かれるままに電気街にはいった。一筋違っただけなのにさっきまでとガラリと変わってパソコンやアニメ関係に特化した店が並ぶ。
「ここすげぇね?」
「ほんまやな」
やたら広い歩道か車道なのか謎の道にメイドがたくさん並んでいた。横を通るたびに声をかけられる。クラシカルなメイドの横で、へそ出しミニスカのメイドがチラシを持っている。こんなにいると、あの中からどれに行こうと悩む時間まで楽しめそうだ。
「メイド見たくて、この道通った?」
「ここ日本橋で観光地やからと思って通ったけど、結果正解ではあった」
「どの子がタイプだった?」
メイドの列が終わってから聞いてみた。
「そんなちゃんと見てないしな、みんなかわいかったんちゃうん」
「でも、好みとかあるんじゃない?」
「東の好みは?」
「えっと」
アイドル風やギャル風、メイクももりもりから清楚までといろんなメイドがいた。いつもならどこの子ならひっかけられそうという目線で見ていたと思うのだけど、今日は星一さんの好みはだれだろうと、自分の趣味まで思い至らなかった。
「えっと、なんか黒髪のツインテの子?」
「黒髪ツインテが好きなん?」
「いや、黒髪ツインテは落とせる率が高い」
「それは好みとは言わんやろ」
とっさに適当に答えたので黒髪ツインテが本当にいたのかわからない。いや、いただろうか?
「うそ、黒髪ツインテの子なんかいなかった」
「何の嘘? 意味わからんやろ」
「ほんとに、ぜんぜん見てないじゃん。女の子興味ない人?」
「いや、普通に好きやけど。でも、この年までなんもなくて、この先も何もないんやろうなと思ったら、無駄にどうこう思いたくないというか、意識からシャットアウトしてる。言っててむなし」
声のトーンはさがるけど、星一さんは足のスピードを変えずに曲がった。ちゃんと頭に地図が入っていて道を間違えない。
大きな車道に出た。道路は数車線で広く、脇をどことなく古いビルが並び、同じように古そうな歩道が続いている。こんな都会のビル、歩道の客がメインだろうに古いからか歩道は細く、細いので寄って歩く。
「まだ若いのにあきらめるの早すぎ。何股もかけてるようなもっと年上のおっさんとかいっぱいいるのに」
「それはもう、若い若くない関係ないやろ」
「だから、星一さんも希望がある」
そう言いながら歩くいているとたくさんのAVのチラシがはられた店があった。そこを過ぎて、店がカレーと肉と、またAVみたいな店が続く。
「ほら、世の中、欲望に紛れてる。星一さんストイックすぎるよ。乱れよ」
「ほんまにこの通り欲望にまみれてるな」
「素材はそんなに悪くないんだから、積極的にもっと遊びに行けば」
「でも、まぁ、一人でネタ考えてる方が気楽やからな」
星一さんはなれしんだ答えという風に話す。
一人でネタを考えているのが楽しいとずっと生きていたんだろう。
満たない欲望の存在を忘れるために音楽にすがっていた俺とは違う。
性欲を解消するというのがはじめてまともに発散できた欲だった。一瞬でも現実を忘れることが酩酊してできた。そんなインスタントな発散に逃げていた俺とは違う。
「そのストイックさが相方には圧だったんじゃないの」
「そうなんかな」
星一さんは壁に貼られた欲望を肯定するビラを見ていて顔が見えない。
会話が止まった。これまでもしょうもない会話ばかりだからいくらでも止まっていた。止まっていた間が気まずいとおもうことはなかったのに、今はきまずい。
あきらかに星一さんを攻撃する言葉だった。解散に自責の念が見え隠れする星一さんを責めた。こんな人の内面に踏み入った言葉、普段なら吐かないのに。嫉妬で、自己肯定のために攻撃した。
「モテへんコミュ症のインドアなだけで、ほんまに全然ストイックでもないねんけどな」
星一さんはつぶやく言葉は、つっこんで欲しいのか独り言なのかがあやふやだ。だけどそれは確実な弱音なのに俺はそのボールを受け取れなかった。
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