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第14話 旅も終盤
ラブホは人がいないタッチ形式のもので普通に入れた。
本当に疲れているつもりはなかったけど、大きなベッドを見ると足が急に重くなる。星一さんも同じように疲れてたのかソファに勢いよく座った。
「あかん、このまま寝そうや」
「せめてベッドでしょ」
「いやその前に、風呂はいろ」
星一さんは風呂にお湯をためはじめる。風呂がベッドに面してない面が全面鏡張りで、お湯を入れた瞬間から曇っていった。
ちゃんと風呂に入ってからベッドなんて、そういうことをひとりでも行う。そんなささいなルールなんて自分にはあったことがない。
お風呂が沸いたとアナウンスが流れた。
「東、先はいる?」
「一緒に入ろう」
「全然入れそうではあるけど?」
星一さんは雲った浴槽を見つつ意図が掴めないのか、否定も肯定もされない。
「せっかくじゃん。ほら」
星一さんを強引に促して浴室に入った。
先に湯舟をいただいて、わしわしと髪を洗う星一さんを眺めてる。
「これ匂いすごいな? フローラル」
「女向けなんじゃない?」
何の花でもない花の香料の匂いが浴室に充満している。俺がじっと眺めているのを星一さんは特に気にしていない。
星一さんがフローラルな泡を流す。
「横入れる?」
星一さんは俺の返事を聞かずに横に並んで風呂に入ってきた。一般的なユニットバスよりは大きいけども、並ぶと肩がぶつかるほど距離が近い。
「うわ、思ってたより狭かった。近いな、ごめん」
かしましく謝ると、星一さんはふーと、息を吐き静かになった。二日連続の歩きっぱなしだ。あたたかいお湯に血のめぐりを感じる。特にふくらはぎがじんじんとしている。星一さんも同じなのかお湯に体を任せている。
肌と肌がひっついたり、離れたりしていた。この人はどの程度、意識しているのだろうか。昨日も一緒に風呂には入ったけど、今は俺が男がいけるとわかっている状態でラブホで風呂。
今、この人はどんな気持ちでここにいるんだろう。
「あかん、寝そう。先出てるわ」
星一さんが抜けるとその分のお湯が減る。堂々と尻をみせて退場。
男らしい後ろ姿に興味はわかないのに、置いていかれると泣きそうだ。
体を洗って、部屋に戻ると星一さんはバスローブ姿でソファに足を投げ出して座っていた。
「くつろいでる。なんか食べる?」
「軽く食べようか。なにある?」
「なにかしら軽食はあるはず。飲み物は冷蔵庫に酒とかあると思うけど」
「水でいいよ」
洗面台の水を二人分コップに汲んだ。机にならべて、ソファが一脚しかなかたのでベッドに座った。
「東、今日は楽しかった?」
「えっ、まぁ」
「ならよかった」
本当に嬉しそうに星一さんは笑ってくれた。
どうしてこんなに尽くしてくれているのだろう。これで好意を持たれないとでも思っているのだろうか。やっぱりアピールされてる? なんて。
「星一さんも楽しかったですか?」
「楽しかった。それに、相方の実物を見たからこそ、心の整理ができた。連れてきてくれてありがとう」
旅行の感想は旅行の終わりだ。0泊の旅行はあっという間だった。もう行先はない。星一さんはマップを開かない。
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