31 / 39

第14話 旅も終盤

ラブホは人がいないタッチ形式のもので普通に入れた。  本当に疲れているつもりはなかったけど、大きなベッドを見ると足が急に重くなる。星一さんも同じように疲れてたのかソファに勢いよく座った。 「あかん、このまま寝そうや」 「せめてベッドでしょ」 「いやその前に、風呂はいろ」  星一さんは風呂にお湯をためはじめる。風呂がベッドに面してない面が全面鏡張りで、お湯を入れた瞬間から曇っていった。  ちゃんと風呂に入ってからベッドなんて、そういうことをひとりでも行う。そんなささいなルールなんて自分にはあったことがない。  お風呂が沸いたとアナウンスが流れた。 「東、先はいる?」 「一緒に入ろう」 「全然入れそうではあるけど?」  星一さんは雲った浴槽を見つつ意図が掴めないのか、否定も肯定もされない。 「せっかくじゃん。ほら」 星一さんを強引に促して浴室に入った。  先に湯舟をいただいて、わしわしと髪を洗う星一さんを眺めてる。 「これ匂いすごいな? フローラル」 「女向けなんじゃない?」  何の花でもない花の香料の匂いが浴室に充満している。俺がじっと眺めているのを星一さんは特に気にしていない。 星一さんがフローラルな泡を流す。 「横入れる?」  星一さんは俺の返事を聞かずに横に並んで風呂に入ってきた。一般的なユニットバスよりは大きいけども、並ぶと肩がぶつかるほど距離が近い。 「うわ、思ってたより狭かった。近いな、ごめん」  かしましく謝ると、星一さんはふーと、息を吐き静かになった。二日連続の歩きっぱなしだ。あたたかいお湯に血のめぐりを感じる。特にふくらはぎがじんじんとしている。星一さんも同じなのかお湯に体を任せている。  肌と肌がひっついたり、離れたりしていた。この人はどの程度、意識しているのだろうか。昨日も一緒に風呂には入ったけど、今は俺が男がいけるとわかっている状態でラブホで風呂。  今、この人はどんな気持ちでここにいるんだろう。 「あかん、寝そう。先出てるわ」  星一さんが抜けるとその分のお湯が減る。堂々と尻をみせて退場。 男らしい後ろ姿に興味はわかないのに、置いていかれると泣きそうだ。  体を洗って、部屋に戻ると星一さんはバスローブ姿でソファに足を投げ出して座っていた。 「くつろいでる。なんか食べる?」 「軽く食べようか。なにある?」 「なにかしら軽食はあるはず。飲み物は冷蔵庫に酒とかあると思うけど」 「水でいいよ」 洗面台の水を二人分コップに汲んだ。机にならべて、ソファが一脚しかなかたのでベッドに座った。 「東、今日は楽しかった?」 「えっ、まぁ」 「ならよかった」 本当に嬉しそうに星一さんは笑ってくれた。  どうしてこんなに尽くしてくれているのだろう。これで好意を持たれないとでも思っているのだろうか。やっぱりアピールされてる? なんて。 「星一さんも楽しかったですか?」 「楽しかった。それに、相方の実物を見たからこそ、心の整理ができた。連れてきてくれてありがとう」  旅行の感想は旅行の終わりだ。0泊の旅行はあっという間だった。もう行先はない。星一さんはマップを開かない。

ともだちにシェアしよう!