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第15話 夜は内緒話の時間、二日目(2)
「ない。そんなのずっとない。どれだけ弾いても下手で、曲もずっと書けてない」
もともとギター自体はそんなにうまくない。佐野さんとの作曲の相性の良さがあっての勧誘だった。なのに曲は思い浮かばずで、せめて演奏はと思っても上手くはならない。
もともと逃げだった音楽がいつからかそれしか持ってなかった。音楽がもうないなら、俺はもうない。
「不調なんて誰にでもあるやろ」
「ずっと不調なのに? 不調なのにそっから逃げて遊んでばっかでクズなんだよ」
「ずっと不調なんやったら、それが通常や」
「はっ?」
「だって、そやろ、ずっとなんやったらそれが通常」
「ずっと下手だってこと?!」
平然とこき下ろされた。星一さんはなにも悪びれない。
「いや、知らんよ。音楽のことなんて」
「は?」
「でも東はバンドメンバーとして活動してたんやろ? メンバーに弾けて書けるって思われてる。出来てるんやで。自分で自分のこと色眼鏡で見てるから、下手やって思い込んでる」
「そんなことは」
そんな独り相撲バカみたいだ。
「俺のこと真面目って言ってたけど、東の方がもっと真面目やわ、そんで完璧主義。酒とセックスに逃げたから音楽できへんクズって、さっき自分でとっかえひっかえのやつおるって言ってたやん」
「そいつらは才能あるから」
自分はなにもないのだからがんばらないと。
「才能ってがんばっても手に入らんもんな」
星一さんはずっと俺のことを見ていた目をそらす。
「星一さん才能ないの?」
「ないよ、やないと日雇いバイトなんてしてないやろ」
「でも続けるんだ」
「かけるうちは」
「お笑いがかけなくなったらどうするの?」
「かけへんときも、何十回ってあった。でもそれだけまたかけてることや。だから、かけなくてもまたかけるようになるって思える。自転車みたいに一回できたことはできる」
「星一さんはお笑いが好きだから信じられるかもしれないけど、俺は」
「東もできる。ちょっと弾かれへんぐらいで自暴自棄になってるぐらい好きなんやから」
「酒もセックスも自暴自棄でやってたんじゃない……」
こぼれた声があまりにもとぼとぼと弱弱しい。今日の俺は本当に情けない。それでも、許される。だって旅行だから、星一さんの前だから。
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