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「参考として訊きたいのだが、松下は奥方に何を贈っているんだ?」
「そうですね⋯⋯私でしたら、お菓子であったり、洋服であったり、ネックレスなど身に付けるものとか、妻がその時欲しがっていた物を贈りますね」
「なるほどな⋯⋯」
「ちなみに姫宮様は何がお好きなのですか?」
「愛賀は⋯⋯」
愛賀の行動を振り返る。
愛息子に向ける笑顔や御月堂が訪れた時の嬉しそうな顔⋯⋯ではなく、大河のことを撮ってあげたり、大河のために編みぐるみを制作していたり、大河が好きだというハニワのアニメを一緒に観たり、御月堂も含め親しき者達からもらったハニワのオモチャを遊んだりと、大河中心であるためか物に関して好きだと思えるものが思い出せない。
やはりここは無難に食に関したものが良いということか。
食事は大河の誕生日にケーキを共にした以来ではあるが、恐らく好き嫌いはなさそうだ。とはいえ、特に好きなものがなさそうに見える。
そこでハッとした。
愛賀もまた自身が好きだと思えるものがない。
それはつまり自分と同じだということ。
いや、これに関しては共通点があると喜んでは愛賀に失礼だろう。
これは胸の内にしまっておこう。
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