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普通の代償 1

「……うう…うそでしょ……」 震える手の中にある紙切れには、大層な数の“0”が並んでおり ヴェネッタは血の気が引くのを感じながらその数字を眺めていた。 眺めていたって0が減るわけではないが、焦りと不安とどうしようもなさに膝から崩れ落ちてそのままヘドロになって溶けていきそうだった。 「ひゃ、ひゃ、100万なんて用意できるわけが……」 「用意してもらわにゃ困るんだよォ! 借りたもんは返す…常識だぜ?」 「でででも…こん、こんな……」 強面の男達に囲まれながら、ヴェネッタは小さくなってガタガタと震えていた。 薄ペラな紙切れに簡単に書かれた金額は、今日中に払ってもらわないと困る、ものらしい。 だけど当然そんなのは青天の霹靂であった。 確かに強面の男達からは、親が勝手にヴェネッタの名義で金を借りていて その何に使ったかしれない目玉が飛び出るような金額の返済責任はヴェネッタにあった。 なのでヴェネッタは成人を迎えた15歳のときから、新聞配達をしたり内職をしたりお手製の魔道具をメルカったりして頑張ってちょっとずつ返していたのだが 何故かここに来ていつもの20倍の金額を払えと言われているのである。 「ヴェネッタちゃんよぉ。俺達はまず返済が始まるまで15年も待ったんだぜ で、4年間もお前のちまちました返済に付き合ってやったわけだ 完全にお前の都合でな!」 「う…うう……」 「だがよ、このままいけば500年はかかるってもんだ うちのボスがさすがに痺れを切らしちまってよ 俺たちはお前が涙ぐましい努力をしていることをそれはそれはもう切実に訴えたんだぜ?待ってやってほしいってな だが最近のお前の状況を見ていると擁護できなくなっちまった」 「さ…最近…?」 「聞けばここの学費タダになったらしいじゃねえか なんとかっつー十家の坊ちゃんが立ち上げた団体のおかげでな!」 強面の男の1人に胸を突かれて、ヴェネッタはびくりと身体を強張らせる。

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