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普通の代償 5
「……テガボ・ヴェネッタに100万の請求…
…でもこれおかしいで?
請求元の住所もサインもないし、国が発行している印鑑も押してへん。“貸与業”のな。
つまりこれはただの落書き…あるいは書き損じか何かでなんの権限もない。
でもこれを使って請求をしたら偽装文章ってことになるし、もしも貸与業の認可を国から受けずに行なっとる場合は
重要文章の偽装及び職種詐称、詐欺行為、更にそれを使った脅迫、恐喝行為に当たることになり…そうなったら懲役30年から60年くらいは……」
ペラペラと喋り出すイヴィトに、男達は慌てて立ち上がった。
「分かった…!分かったよ!そいつはただのお遊びだ
ちょっとからかっただけだ、ヴェネッタちゃんがあまりにも可愛いからなァ!」
男は全然心にもないような言い訳をして、くそ、と舌打ちをしている。
「今日のところは引き下がってやる。
だが忘れるなよ、お前の借金が減ったわけじゃねえ
次は“本物”の請求書が待ってるからな」
男はそう言うと、ちょっと足を引き摺りながら去って行ってしまった。
ヴェネッタはだらだらと泣きながらイヴィトの背中を見上げてしまう。
彼の手にあった紙は、彼の指先から炎が燃え移りあっという間に炭になってしまった。
「ヴェネッタ先輩…大丈夫?」
イヴィトはようやく振り返ると、腰が抜けて立てなくなっていたヴェネッタの前にしゃがみ込んで心配そうに顔を覗き込んでくる。
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