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普通の代償 7
しかし、イヴィトは見た目以上に気さくな性格らしく、一つ下の学年とはいえ平気で友達のように話しかけてくるので
ヴェネッタはどちらかといえば苦手な人種のような気がしていた。
ただ友情だの青春だの以前に借金と学費に頭も首も回らなくて、
引き篭もって魔道具を作り続けるか工場のバイトに明け暮れていたヴェネッタにとって、
彼らみたいなThe貴族の学生というような余裕のある人間達とは今まで関わりがなかった為、
よくわからないが怖いと感じているだけなのだが。
ヴェネッタには彼らのような余裕のある、所謂陽の者が“普通以上の存在”に思えていた。
勉強だって魔法の訓練だって、社交性だって何だって、当たり前の生活が保証され余裕がある人種だからこそできる事であって
今日か明日かと命をどうにか繋いでいるような人間には一生同じステージには辿り着けないのは当然で。
こっちが明日の授業料のために自転車を漕いでいる間にも
彼らは優秀な魔法使いになる為のスキルや知識をどんどん身につけ、
更には余暇で友達だの趣味だの、果てには恋人だのを得ているのだろうから。
彼らからしたらそんな必死こいてようやく普通と呼べるかどうかみたいな人間はさぞかし目障りなのだろうとヴェネッタは卑屈に捉えていた。
現に、学園の学費を払う、という普通の事でこんなに難儀していて
その問題がようやくクリアになった途端、こんな風に命が危ぶまれているのだから。
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