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普通の代償 8
「やけど…あの人達がちゃんと真っ当に貸与しとるとは思えんなぁ…
イオンにも相談してみた方がいいと思うで?
俺もちょっと調べてみるし」
「え…?い、いやいや…そんなお手を煩わせるわけには…」
「だって心配やろ。ほら、ヴェネッタ先輩ふらふらになっとるし…」
イヴィトは覚束ない足取りで歩いているヴェネッタを見下ろすと、呆れたようにため息を溢している。
年下なのに自分より遥かにしっかりしていそうな彼には変な笑みを浮かべて誤魔化してしまう。
しかし彼はヴェネッタの腕を取って再び歩き出した。
「他に何もされてへんよな?怪我とかしてへん?」
「え、あ……」
がっしりと手首を掴まれて、彼に引っ張られながらもヴェネッタは何故か顔が熱くなってしまう。
あんまり誰かに心配されたことも無かったし、触られた事だって。
でもさっきのよりは嫌過ぎるということも無くて。
「……先輩?」
「あ、だ、だだ、大丈夫でござい…っ!」
「……それならいいけど?」
イヴィトはじろっと見つめてきたが、ヴェネッタはついフードを深く被ってあんまり彼と目を合わさないようにした。
爽やかに平気で人に触ったり距離を詰めてくる彼らがやっぱりちょっと苦手だった。
だけど、なぜだかその手から伝わってくる温度には安心のような心地を抱いてしまって
それが不思議でたまらなかった。
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