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栄華の残骸 2

家の財産を食い潰し、仕事もほとんどしていないような父親の癇癪や、理不尽で過酷な労働を繰り返す毎日でヴェネッタがどうにか心を壊さないでいられたのは たまたま偶然出会ったB.E.Rという宗教団体のおかげだった。 勧誘に来たB.E.R会員を追い返した父親は、くだらないといって押し付けられていた冊子を捨てていたが ヴェネッタはそれを拾って中を読んでしまった。 “大天使の生まれ変わり”を熱く信奉する者達のエッセイや予言の載った雑誌は、 何らかの救いを求めていたヴェネッタにまさにうってつけだったのだ。 歴代の“大天使の生まれ変わり”が残した言葉集のページなんて何度読んだか分からない。 暴力や声を荒げることでしか考えを主張できないような大人に囲まれて育ったヴェネッタにとっては、慈善や愛についての見解は衝撃だったのだ。 この世界には、こんなにも聡明で慈悲深い考えを持つ人間がいるのだと感動してやまなかった。 そして、100年以上ぶりに現れた“大天使の生まれ代わり”が1つ年下であるという事を知って余計に嬉しくて、 次期皇帝の婚約の儀の写真で見た“大天使の生まれ代わり”の姿には腰が抜けるくらいだった。 この世界にこんなにも美しい人間がいるのかと驚いたものである。 それはもちろん新聞にも取り上げられていて、街行く人達だって噂をしていた。 自分が信じているものをみんなが話していてとても自慢げな気持ちだった。 本当は遠くから見ているだけで良かったけど、ヴェネッタはどうしても“大天使の生まれ代わり”を一目見てみたくて ハートン学園への入学を強く希望した。 もちろん本来であれば希望しなくたって強制的に行かなくてはならないのだが父親には、そんな金はない、と常々言われていたのだ。 そもそも、18になる前に魔法を抜けと言われていたのである。 なのでヴェネッタは必死に父親に交渉した。 殴られても蹴られても、自分でなんとかするからと泣いて懇願した。 ヴェネッタが父親に何かを訴えたのはそれが最初で最後だったかもしれない。 父親はヴェネッタを好き放題殴り付けた後、結局折れて好きにしろとだけ言った。 ヴェネッタは踊り狂って、学費を貯めるためにこれまで以上に働き始めた。

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