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普通の悩み事 2

とはいえ、困り事が無いわけではない。 だけどそれは別のベクトルでの困り事で、ヴェネッタにとっては贅沢な悩みと言っても過言ではないかもしれない。 「あ、いたいたーヴェネッタ先輩!」 ヴェネッタは後ろから声をかけられてその声にびくりと背中を強張らせ、恐る恐る振り返った。 赤茶色の髪、浅黒い肌、紅茶色の瞳。 しっかりとした体格で、存在感があるような、そんな下級生が駆け寄って来ている所だった。 「あ…あぅ…イヴィト殿…」 ヴェネッタが戸惑っていると、彼は爽やかな笑顔を向けてくれる。 「食堂行く所?ご一緒しても?」 イヴィトの紳士的な誘いに、ヴェネッタは視線をうろうろ彷徨わせながらこくんと頷いた。 2年生になったばかりのイヴィトの胸には真新しい青色のネクタイがあって、前の赤色の方が似合っていたような気がする、とどうでもいいことを考えてしまう。 「春休み気分が抜けんで…っていうか、 2年生の教室が分からんくてまだちょっと迷い中や」 「…た…確かに…さっき間違えて前の教室に行こうとしてしまいました…」 「あー、あるある」 並んで歩きながら、いつも通りのなんでもない会話が始まる。 イヴィトは目付きが鋭くて、眉もキリッとしているし背も高いし体格もいいのでちょっと怖そうに見えるが 喋ると穏やかだし、ちょっと訛っているし、性格も結構平和主義で、なんなら戦いはあまり好まないらしい。 その恵まれた体格の所為でスポーツやらのクラブ活動に誘われまくったりしているらしいが、 争い合うのは嫌だとか対話で解決できるのならそれに越した事はないと考えているようだった。 年下だけど面倒見のいいイヴィトは、ヴェネッタにも色々と気遣ってくれていて 時々タガが外れたように暴走してしまうヴェネッタをいつも呆れつつも見守ってくれるし、レンシアが逮捕された時は悔しくて悲しくて大号泣してルームメイトに煩いと部屋から叩き出されてしまったのに イヴィトは一晩中隣にいて慰めてくれた。 だけど、泣いててもレンシーは助けられへんし。レンシーはそんなの望んでないんとちゃう、としっかり怒ってくれもしたのだ。 そのおかげでヴェネッタは自分でも信じられないくらいの行動力を発揮してしまったのだった。 その頃からか、なんだか時々イヴィトを見ていると頭がぼうっとなるような、 なんだか酔っ払った感覚になったり、でも目が合うと必要以上ににどぎまぎしてしまったり それなのに彼といると安心したり、何か恐ろしい事があった時に彼の背中に張り付いていると落ち着く事が出来たりするのだ。 優しくて頼り甲斐のあるイヴィトは誰に対してもそうなのかもしれないけど、彼に笑いかけてもらったり、助けてもらう度に起こってしまう不思議な感覚に 最近は翻弄されているヴェネッタだった。

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