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おしゃれとは? 1
イヴィトに予約を入れられた日曜日。
てっきり何かの内職を手伝わされるのだろうと思いきや、前日の夜に会った彼から
「じゃあ明日な、おしゃれしといてな!」
なんて言われてしまったので、ヴェネッタは悩みに悩んでいた。
おしゃれなんて今まで一度だってした事がないし、そもそも私服なんてほとんど持っていないのである。
そんなものを買う余裕なんて無かったし、必要があるとも思えなかったから。
ヴェネッタは朝から、クローゼットを開けたままの姿勢で絶望してしまっていた。
何故ならほとんど服なんて入っていないのである。
「……お前いつまでそうしてんだよ…」
後ろから辛辣な声が聞こえて来て、ヴェネッタは半泣きで振り返った。
「じ…ジエン殿…」
「殿つけるのやめろっつってるだろ」
「ど、どうしよう…自分おしゃれなど何が何やらさっぱりで…」
「はァ?おしゃれだぁ?」
作りかけの魔道具などでごちゃごちゃのヴェネッタの机周りとは正反対の、綺麗に整頓された机に頬杖をつき
ヴェネッタの様子を見物していたルームメイトのジエンは、呆れたように目を細めている。
彼は一生高圧的ではあるが、必要以上にうるさくしない限りは虐められることはないので
ヴェネッタは少々ビクビクしながらも彼とは上手くルームメイトをやっているのだった。
「なんだ。あの年下彼氏くんとデートにでも行くのか?」
「ちちち違いますよ…デートだなんて…それに彼氏などでは決してございませんて…」
ジエンは頻繁に部屋を訪れるイヴィト達とも顔見知りになっているが、何故かイヴィトの事をヴェネッタの彼氏という事にしたいらしい。
そうやってからかっているのかもしれないけど、ヴェネッタは彼にはあまり口答えできないのである。
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