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大切 1

新しい眼鏡は物理的にとても軽く感じたし、ありえないくらい視界良好だった。 今まで世界が如何にぼやけていたかがよく分かって、ヴェネッタは鮮明な世界を見渡した。 空が、雲が、凄くくっきり見える気がして、素直に美しいと思えた。 「お待たせー」 遅れて店から出てきたイヴィトを振り返ると、彼の顔もめちゃくちゃはっきり見える気がして そんなに睫毛長かったっけとか、そんなに鼻が高かったっけと思わず眺めてしまうヴェネッタだった。 「気に入ったん?」 イヴィトは面白そうに笑っていて、ヴェネッタはハッとなって飛び上がった。 気が付いたら眼鏡を買ってもらっているのだ。 「い、いイヴィト殿…!やっぱりこんな高価なもの頂くわけにはいきませんって…!」 「今頃?もう払っちゃったし…」 「か、か、返します!!」 「いいってばー。俺が何かあげたかったんよ」 「で…でもでも…自分…何もイヴィト殿の役に立ってないですし…」 「役に立つとかじゃないやん…俺がしたかっただけやから」 今まで搾取されるばかりで与えられた事なんてなくて、ヴェネッタはどうすればいいか分からず戸惑ってしまう。 後で800倍くらいにして返せとか言われるかもしれないとか、イヴィトはそんな人ではないと分かっていながらも不安になるのだ。 「…そ…そもそも誕生日なんて祝われた事なんてないわけで… ていうか自分なんかの誕生日にイヴィト殿が…そんな……」 「ヴェネッタ先輩」 「フ!?!?!?」 イヴィトはヴェネッタの頬を両手で包むと真顔でじっと見つめてくる。 視界良好の中で見る彼の真顔はなかなかに迫力があって、噛み殺されるのではと思ってしまい勝手に身体が震えて行ってしまう。

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