43 / 51

大切 4

結局ヴェネッタはイヴィトに連れられて、視界に入れた事すら無いようなおしゃれなレストランに連れて行かれ メニューを読んでも何が何やら分からず、呪文?と戸惑ってしまった。 イヴィトはテキパキと店員に注文をして、毎日通っているのかというくらい自然に優雅に食事をしていて ヴェネッタはなんだか高そうな料理を震える手付きでどうにか食したのだった。 それから、折角街に来たのだしと色んなお店を見て回ったりもしたが ヴェネッタは、イヴィトが言った好きだの大切だのという言葉が頭の片隅から離れなくて 魔道具のために買わなきゃと思っていたものがなんだったかを忘れたし、 そうならないようにメモしておいたのにそれを見ることも忘れてしまうハメになるのだった。 「はぁ…」 煌びやかな街中にあるちょっとした広場のような所のベンチに座って、ヴェネッタはぼけっと口を開けて空を見上げてしまっていた。 日は既に傾きかけていて、ちょっと休憩してから帰る事になったのだ。 イヴィトは何か飲み物でも買ってくるとどこかに行ってしまって、確かにちょっと疲れていたのでヴェネッタは一人で大人しく待っている事にした。 買う予定のないものを見て回ったり、広場でこんな風にゆっくりと休憩したりなんて初めてのことだ。 今までそんな余裕も発想も無かったし、そもそも堂々と街を歩いたことだってなかった。 いつもより随分と視界良好な所為で、広場にいる人々の楽しげな姿がよく見える。 仲が良さそうにベンチで語らっているカップル、待ち合わせなのか手鏡を覗いて髪型を整えている人、アイスクリームを買ってもらっている子ども、手を繋いで歩いている親子。 豊かで、愛に溢れていて、幸せそうな人間は全員別世界の人間に思える。 だけどそこに確かに存在している幸福を見ると、ヴェネッタは安堵してしまうのだ。 よかった、世界はまだこんなに幸せが溢れているんだと思えるから。 世界の全部が自分と同じように苦しんでいたら、それこそ何にも救いがない気がするから。

ともだちにシェアしよう!