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大切 5
ヴェネッタは膝の上に乗っていた眼鏡屋で貰った紙袋の中を覗き込んだ。
ケースの中には、自分が今まで使っていた眼鏡が入っているはずだ。
もうボロボロで使えないし、持っていても仕方がないものだと分かっているけど。
「……」
大切とか、好きとか、それこそ幸せなんてヴェネッタは無縁だと思っていた。
自分がそんなものを手に入れる事が出来るなんて思っていなかったし、手に入れる資格もないのではとすら。
イヴィトがどんなつもりなのかは分からないけど、きっと騙すようなことはしないだろうという希望的観測を抱く事にした。
この眼鏡もまた10年くらいは、いや20年は大事に使わせて貰おうと。
そうしたら少し、幸せというものが自分にも訪れていたかもしれないと思い出せるかもしれないから。
ヴェネッタはそう感じながらそっと新しい眼鏡に触れて、一人で小さく微笑んでしまうのだった。
すると、急に視界が暗くなって目の前に誰かが立っている事に気付く。
イヴィトが戻ってきたのかと顔を上げると、そこにいたのは黒いスーツを着た男で、
気が付くとベンチを取り囲むようにして3人の男が立っている。
「よぉヴェネッタちゃん。カワイイ格好して呑気にお買い物か?
随分といいご身分になったんだなぁ」
もう縁が切れたと思っていた借金取りの男だった。
彼はいつも通りニヤニヤ笑いながらもヴェネッタを見下ろしている。
「え…、あ、な、何かご用で……?」
「ご用だと?あんな紙切れ一枚で俺たちの仲が引き裂かれるわけないよなぁ」
「で、ですが……」
「まあちょっと面貸せや!人目について困るのはお前だろ?
何せあの天下のハートン学園のお生徒様なんだからさぁ、ヴェネッタちゃんは」
男はそう言いながらほとんど強制的にヴェネッタを立たせた。
残り2人の男からも有無も言わさぬ圧を感じて、ヴェネッタは仕方なく彼らについていった。
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