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バースデーハッピー 5
自分の誕生日を祝ってもらって、ケーキを切り分けて食べたことなんてヴェネッタの記憶上存在しなかった。
普通の家庭では、そんなことが当たり前のように行われている事くらい知っていたけど、自分の誕生日なんて呪われた日だとすら思っていたから。
父親も機嫌がいい時はケーキくらい買ってくれたりしていたけど、誕生日はやっぱり気に入らないみたいだったから。
ヴェネッタはその時のことをなんとなく思い出してしまって、幸せなはずなのに妙に複雑な気持ちになってしまった。
友達と呼んでも怒らないような人達に憧れの人、そんな人達が自分の事を祝ってくれるなんて。贅沢にも程があるというのに。
やっぱり自分は昨日みたいな殺されかけるような人間なのでは無いかと言う気持ちが少しばかり存在してしまっているから。
「……ヴェネッタ先輩?」
寮へ帰っている途中ついため息が溢れてしまうと、隣から呼ばれてヴェネッタは顔を上げた。
本棚を抱えたイヴィトがそこにいて、そういえば運ぶのを手伝ってくれているのだった、と思い出す。
彼は心配そうに首を傾けている。
「す、すみません…ちょっと……色々思い出してしまいましてな…
どうも最近贅沢が過ぎているようで…」
贅沢は敵だ、というよりも別世界だと思っていた。
どうにかしてそこに行きたいとすら思えないような。
「…贅沢なんかやないと思うで…」
「…ふふ。イヴィト殿たちにとってはそうかもしれませんなぁ。
でも自分は…ずっと生きているだけで充分だと思っていましたからね。
この学園に通うのが最大限の贅沢で…それ以上なんて恐れ多くて考えもしなかった…」
将来の事なんて全然頭になかった。今日か明日かをどうにか耐え凌いで、気が付けば20年間も生きている事になる。
それはなんだか不思議で、複雑で。
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