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島の外の人 1
自分の人生は特に変わったところはなく、“普通“で、それは大体の人間の平均、という意味で、とイヴィトは自分でそう評価していた。
普通という人生は、わざと人を傷つけようとか、何かを奪ってまで得や楽をしようとしなければ歩ける平坦で平和な道なのだと思っていた。
だけど、ハートン学園にやって来てから“普通”の概念が大きく揺らいでしまった。
良いとか悪いとか、善良であるとか、意地悪であるとか、そのどちらかに極端に偏っている人間なんて本当は数少ないという事。
そして、例え善良であろうとどんなに努力していても覆らないような理不尽があったり
わざと誰かに恨まれるような真似をしても平気で豊かに暮らしていける人がいたり
自分の為ならば誰を踏み台にしても構わないと思っているような人がいたり。
反対に、そんな理不尽や不平を跳ね除けて信じる事を直向きに掲げている人間もいたり。
見ていて危なっかしいし心配になるし、それなのに自分には出来ないような大きな事を簡単に成し遂げていたり。
島の外側の人々は、こんなにも面白い人間達ばかりなのかと驚くような毎日だった。
イヴィトは、国の端っこの大きな海の上に浮かぶ小さな島で生まれ育った。
父親はルン辺境伯として島を統治していたが、どっしりと構えて威厳があるような感じでもなく
島の人達と一緒になって漁に乗り出していったり、一緒になって朝まで浜辺で酒を飲み散らかしたり、だけど森で幻獣生物が暴れていれば真っ先に槍を持って飛び出していくような少々破天荒な人だった。
イヴィトは幼少の頃から夫人に、父ちゃんのようになったらあかん、と口酸っぱく言われており
どちらかといえば夫人に似てしまったのだろうと自負していた。
だけど島民の為なら平気で怪我をしてくるような父親も、そんな彼に呆れながらもちゃんと立てているような夫人もどちらもそれぞれ尊敬できる両親ではあったので
彼らの背中を見て、絶対に曲がった事はしてはいけないとか、世の為人の為に生きなきゃならんとか、年上を敬い年下を守れとか、他の存在を傷つけてはダメだとか、
そう言った教えを忠実に守りながら成長したのだった。
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