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平等には出来ない人 5
「ふぅ…と…とりあえず上手く行ったようで…
まあでも商品化するのはもう少し経過観察が必要ですが…」
ヴェネッタはノートに何か書きながら微笑んでいる。
目が三日月みたいに細くなって微笑まれるとイヴィトは単純に、可愛い、と思ってしまうのだ。
動物とか子どもとかにはそう思ったことはあるけど、年上の人にそんな感情を抱くのは初めてで。
それに今まで抱いてきた“可愛い”とちょっと違うような感じもするのだ。
「おぉ!これだと絵も描きやすい気が…!
ちょっとそちらも貸してください」
「え?うん…」
「ふむふむ」
ヴェネッタはイヴィトが持っていたペンを奪い、ノートを自分の方に寄せると何か懸命に描き始める。
先程とは違ってどこか楽しそうに口元に笑みを浮かべている姿には、胸を鷲掴みにされたみたいになって
イヴィトはバレないように、はぁ、と息を吐き出した。
「うん、うん…!どうですか?この色を2色使うアイディーア!
物書きだけでなく絵描きも使ってくれるかもしれませんな!」
ヴェネッタはそう言いながらノートを持ち上げてイヴィトに見せてくれた。
そこには人物が描かれていて、基本の線は青だったが髪の所や目の部分は赤に塗られている。
走り書きとはいえ誰だか分かるくらい、画家のような上手さだった。
「これ…俺?」
「えへへ…分かりますぅ?」
ヴェネッタは嬉しそうにノートを見下ろしている。
イヴィトは時々、彼の魂胆が分からなくて困惑してしまうのだ。
あんなに毎日レンシアの事ばかり口にしているのに、どうしてこういう時自分を描いてくれるのだろうとか。
どうしてそんな嬉しそうな横顔を平気で晒しているのだろうとか。
わざとやっているのだろうかと疑いたくなるくらい。
そんな事をされたら、独り占めしたくなるし、少しは好きだと思ってくれているのだろうかとか自惚れてしまうというのに。
「……ヴェネッタ先輩絵も上手いんや…」
「うーん…絵というか模写といいますか…見たまま描いただけですが…」
「俺こんな男前じゃあらへん」
「そうですか?」
イヴィトはため息を溢しながらヴェネッタの肩に凭れるようにして彼の手元にあるノートを覗き込んだ。
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